日本歯科保存学雑誌
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生活歯の漂白に関する研究 : エナメル質の微細構造と耐酸性の変化およびフッ化物塗布の影響
丸山 敬正韓 臨麟興地 隆史岩久 正明
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2007 年 50 巻 2 号 p. 256-265

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抄録

近年,歯の軽度な変色に対する改善の要求は増加しており,低侵襲で審美的改善が可能な漂白処置に注目が集められている.現在有髄歯を対象とした漂白法は,歯科医が治療室で漂白処置を行うoffice bleachingと,患者が家庭内で行うhome bleachingの2種に大別される.しかしながら,このような漂白処置が健全なエナメル質にどのような影響を与えるかについては検討の余地が残されている.そこで,本研究では生活歯の漂白処置がエナメル質表層に与える影響を明らかにするために,若年者(20,30歳代)もしくは高齢者(60歳以上)より得られたヒト新鮮抜去歯を,office bleaching剤(Hi Lite®)あるいはhome bleaching剤(Nite White Excel®)により漂白し,漂白前後におけるエナメル質表層部の微細構造変化を走査型共焦点レーザ顕微鏡にて観察するとともに,歯の色調変化についても検討した.また,漂白処置面のエナメル質耐酸性の向上を目的としてフッ化ナトリウム・リン酸酸性溶液(9,000ppmF)の塗布を行った後,歯面からのカルシウムイオン溶出量を測定してその効果を検討したところ,以下の結論を得た.1. Hi Lite, Nite White Excelともに,歯面への適用によりエナメル質表層部が脱灰,粗造化することが明らかになった.また,その後の歯面研磨によって,エナメル質表層の粗造化の改善が観察された.2. 若年者群のほうが高齢者群よりも脱灰深さおよび表面粗さの値が大きかった.3. 色調変化については,いずれの漂白法も有効であったが,高齢者群と比較して若年者群で明度変化量が大きかった.4. 漂白・研磨後の歯面に対してフッ化物を塗布することにより,カルシウムイオンの溶出量が有意に減少することが明らかとなった.その際,エナメル質表層部の微細構造に大きな変化はみられず,色調に対する影響も認められなかった.したがって,漂白後のケアとして,歯面研磨のみならず,フッ化物応用による歯質耐酸性の向上を図ることが有用であることが示唆された.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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