日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
インプラント周囲炎の治療に関する基礎的研究 : インプラント用チタン合金表面に付着した歯周病原性細菌の除染に関するin vitro研究
細田 幸子辰巳 順一谷田部 一大
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 50 巻 3 号 p. 365-372

詳細
抄録

インプラント周囲炎に罹患した患者において,インプラント体表面の除染はインプラント体周囲の消炎や骨の再結合を得るために,きわめて重要である.しかし,この除染方法についてはいまだ確立していないのが現状である.そこで,インプラント体と同様の表面処理を施したチタン合金表面に付着した歯周病原性細菌の効果的な除菌方法をin vitroにおいて調べ,インプラント周囲炎に対する効果的な治療方法の基礎的検討をする目的で本実験を行った.まず,ハイドロキシアパタイト-ブラスト酸処理インプラントサンプル表面への歯周病原性細菌の付着は,Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4株を好気条件下で37℃で4時間静置培養して行った.培養後,細菌除去方法として,生理食塩水(control群),0.1%クロルヘキシジン(CHX群),35%リン酸ジェルによるエッチング処理(Etch群),弱酸性水(EO群),高圧水洗浄(WA群)および高圧水+重曹粉末噴霧(PA群)により除染操作を行った.各処理終了後,走査電子顕微鏡を用いてインプラント試料表面の細菌残存状態を観察した.また,electron probe microanalyzer(EPMA)を用いてインプラント試料表面に残存している元素の定性・定量分析を行った.走査電子顕微鏡による観察の結果,PA群が最も細菌除去効果が高かったが,control,Etch群では除染効果は低かった.EPMAによる元素分析の結果,PA,WA,EO,CHX群では高い除染効果が認められたが,controlとEtch群ではほとんど認められなかった.さらにPA群では,元素分析の結果では除染効果が最も高かったが,SEM像からインプラント試料表面の表面形状は,未処置のものと比較し平坦化していた.これに対しWA群はPA群と比較しやや除染効果は低下するものの試料表面の形状に変化は認められなかった.以上の結果より,WA群がインプラント表面形状に影響せず除染効果が高いことから,今回検討した除染法のなかでは最も効果的な除染法であった.また,SEM像と元素分析による汚染物の定量的評価を併用することにより,インプラント試料表面の除染法を評価できることが示唆された.

著者関連情報
© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top