日本歯科保存学雑誌
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原著
二酸化チタン含有低濃度過酸化水素剤の漂白効果 : 高濃度過酸化水素剤との比較
中澤 妙衣子加藤 純二平井 義人
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2007 年 50 巻 3 号 p. 373-378

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抄録

office bleaching法は,短期間で確実に漂白効果を表すことができ,歯科医師の管理下で行うことができるが,用いる薬剤は高濃度過酸化水素を主成分としており,歯質に与える影響や軟組織の保護など,考慮しなければならない点が多い.そこで,歯質や軟組織に対してより安全で,確実な漂白効果を期待できるoffice bleaching剤の開発研究が必要になっている.野浪らは,二酸化チタンが光を照射することで脱色効果を示す点に着目し,二酸化チタン光触媒と低濃度の過酸化水素からなる歯科用漂白剤を開発した.現在,その漂白効果およびその使用法に関して報告されているが,高濃度過酸化水素の漂白剤との相違点など,いまだ不明な点が多い.そこで今回われわれは二酸化チタン含有低濃度過酸化水素漂白剤を用いた漂白法の効果を検証するため,一定時間ごとに色と表面粗さを測定した.試料は冷凍保存したウシ抜去下顎前歯を用いた.実験群は,二酸化チタン含有低濃度過酸化水素漂白剤にて漂白を行う群(以下,P群),35%過酸化水素を主成分とした漂白剤にて漂白を行う群(以下,H群)の2群に設定した(n=20).漂白剤は二酸化チタン含有3.5%過酸化水素漂白剤ピレーネ®(三菱ガス化学,以下,ピレーネ)と,35%過酸化水素を主成分とした松風ハイライト™(松風,以下,ハイライト)を用いた.光照射器には高出力ハロゲンランプハイパーライテル(クラレメディカル)を用いた.測色には微小面分光色差計VSS300H(日本電色工業)を用いた.CIE1976 L*a*b*表色系のL*,a*,b*を測定し,Δを求めた.表面粗さの測定には,handysurf E-30A(東京精密)を用い,粗さ(Ra)の値からΔRaを求めた.P群,H群ともに,L^*値は有意に増加した.a*値は両群ともにわずかに増加したが,有意な変化は認められなかった.b*値は両群ともに,ほぼすべての試料において有意に減少した.色差値は,P群で平均3.38,H群で平均3.65であった.このことから,ピレーネはハイライトとほぼ同様の効果を表すことができると考えられる.表面粗さ(Ra)について,P群ではほぼ変化が認められなかったが,いくつかの試料では減少傾向が認められた.H群でもほぼ変化は認められなかった.これらのことから,ハイライトとほぼ同様の漂白効果を表すことができると示唆された.

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