日本歯科保存学雑誌
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原著
マイクロCTを用いたヒト下顎大臼歯樋状根根分岐部髄室床副根管の観察
田中 幹久新井 恭子北島 佳代子五十嵐 勝川崎 孝一
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2007 年 50 巻 4 号 p. 530-538

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抄録

いわゆる樋状根は,本邦では1941年中山によって初めて記述された.その発現頻度は下顎第二大臼歯では28.9%,下顎第三大臼歯では10%である.樋状根歯の歯根形態は頬側面観において近心根と遠心根は癒合し,舌側の根面には深い分岐溝(縦溝)によって特徴づけられる.これらの歯はしばしば根管系が複雑な形態を有する.そのなかでもC型根管は最もよくみられるが,適正に根管を拡大清掃し充填することが困難なこともあろう.Lowmanら(1973)によれば,歯根面の歯冠1/3と中央1/3における副根管の発生頻度は上顎大臼歯で55%,下顎入臼歯では63%であった.それらの根管側枝や副根管内にある炎症性病変は歯髄-歯周疾患の進行や処置法をしばしば複雑にすることもある.文献上では,樋状根の根分岐部における副根管の存在はいまだよく研究されていない.本研究では,その近心根と遠心根の間の連結部における髄管の存在と解剖形態についてマイクロフォーカスX線CT(SMX-100CT,島津製作所)を用いて観察を試みることであった.ヒト抜去永久歯の下顎第二大臼歯9歯,下顎第三大臼歯1歯からなる樋状根を有する総計10歯が検索された.歯は10%ホルマリン水溶液中に浸漬保存されていたが,患者の年齢,性別,歯の抜去の理由は記録されていなかった.マイクロCT画像では髄室床から根間部に達する髄管は根分岐部には走行していないことがわかった.本研究結果から,3-D画像においても根間部には著明な根間稜は全くみられなかったことと,いわゆる根管側枝が,歯根中央や根尖側から始まり主根管に向かってしばしば走行する可能性を明らかとした.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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