2007 年 50 巻 6 号 p. 681-687
近年,臨床要求の拡大から,高齢者に対するホワイトニング症例も増加している.しかし,高齢者の対象となる歯牙は,咬耗や摩耗などの種々の機械的刺激を受け,歯根露出も認められることから,ホワイトニング剤が直接象牙質に接触することになる.そこで,ホワイトニング剤が,ウシ象牙質の機械的性質に及ぼす影響について検討した.供試したホワイトニング剤は,ホームホワイトニング用のハイライトシェードアップ(松風)とした.象牙質試片は,ウシ下顎前歯歯冠部象牙質をブロックとして切り出し,4×4×1mmの大きさになるよう調整した,この象牙質試片に,ホワイトニング剤を塗布し,37℃,相対湿度80%の湿箱中に1時間静置する操作を,1日1回,56日間連続して行った.これらの試片について,超音波透過法による弾性率の測定,微小硬さ測定器を用いたヌープ硬さの測定,ホワイトニング剤のpH測定および代表的な試片の走査電子顕微鏡観察を行った結果,以下の結論を得た.1.ホワイトニングを行ったウシ象牙質試片の弾性率は,実験期間を通じて変化は認められなかった.2.ホワイトニングを行ったウシ象牙質試片のヌープ硬さは,実験期間を通じて変化は認められなかった.3.ホワイトニング剤とウシ象牙質粉末混合溶液のpHは経時的に上昇し,1時間経過した時点で7.02を示した.4.ホワイトニングを行ったウシ象牙質の表面は,スミヤー層が除去され,象牙細管が開口し,形態的変化が認められたものの,管間および管周象牙質に明らかな形態的変化は認められなかった.