日本歯科保存学雑誌
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原著
試作S-PRGフィラー含有根管充填用シーラーに関する研究 : 根管封鎖性,抗菌性および根管壁への各種イオンの移行について
韓 臨麟竹中 彰治興地 隆史
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2007 年 50 巻 6 号 p. 713-720

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抄録

多機能性表面処理ガラスフィラー(Surface reaction type pre-reacted glass ionomer filler:以下,S-PRGフィラー)は,コンポジットレジンなどに配合することによりフッ素(F),ストロンチウム(Sr),ホウ素(B)などのさまざまな元素の徐放能を付与することが可能とされる.本研究では,新たに開発されたS-PRGフィラー含有試作根管充填用シーラー(以下,S-PRGシーラー,松風)の諸性質を検討した.1.歯冠側における根管封鎖性の評価 ヒト抜去単根歯20本の歯根部を試料とし,#40/.06テーパーに拡大形成後,EDTA含有根管洗浄液(スメアクリーン®,日本歯科薬品)を根管壁に作用させた.次いで無作為に4群(各n=5)に分け,S-PRGシーラー,もしくは酸化亜鉛ユージノール系シーラー(PulpDent® Root Canal Sealer:以下,PulpDentシーラー)による糊剤根管充填,もしくはガッタパーチャポイントを併用した側方加圧根管充填を行った.試料を蒸留水中に60日保管後,0.2%フクシン溶液に24時間浸漬した後,歯根横断切片の実体顕微鏡観察を行い,根管口から根尖側1,3,5mmの位置での色素浸透を5段階のスコアで評価した.2.根管壁象牙質への各種イオンの取り込み観察 色素浸透試験と同様の方法で作製した試片を,蒸留水中に7あるいは60日間保管後,根管横断面の薄切片を作製し,根管壁におけるF,Sr,Bの分布を波長分散型エックス線マイクロアナライザーにより分析した.3.抗菌性の評価 Enterococcus faecalis,Propionihacterium acnesあるいはActinomyces israeliiが培養された血液寒天平板上に,S-PRGシーラーおよびPulpDentシーラー(いずれも練和直後および練和12時間後)を静置し,37℃,24時間嫌気培養後の阻止円の形成を観察した.これらの実験より,以下の結果が得られた. 1. いずれの観察位置とも,色素浸透に4群間の有意差はみられなかった(Kruskal-Wallis検定,p>0.05). 2. S-PRGシーラーと接する根管壁象牙質に,FおよびSrの取り込みが確認された.PulpDentシーラーでは取り込みは観察されなかった. 3. 2種のシーラーは練和直後,練和12時間後ともP. acnesおよびA. israeliiに対し抗菌性を示した.E. faecalisに対する抗菌性は認められなかった.以上より,S-PRGシーラーがフッ素,ストロンチウム徐放能を備えること,および酸化亜鉛ユージノール系シーラーと同程度の根管封鎖性と抗菌性を示すことが示唆された.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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