日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
不死化マウス歯小嚢細胞より同定した歯根膜前駆体様細胞の解析
富沢 尚夫斎藤 正寛高坂 一貴相野 誠野口 俊英寺中 敏夫
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 51 巻 1 号 p. 1-8

詳細
抄録

歯小嚢細胞は,発生期歯胚外周に存在する間葉系細胞である.歯根形成過程において,歯周組織を構成するセメント質,歯根膜および歯槽骨は歯小嚢中の前駆体細胞より生じる.著者らは以前より,不死化マウス歯小嚢細胞(mouse dental follicle cells : MDFE6-EGFP)中に歯根膜前駆体細胞が存在することを報告してきた.本研究では,MDFE6-EGFPより歯根膜前駆体様細胞株を樹立したことを報告する.MDFE6-EGFPから単細胞クローンを得て,腱/靭帯細胞マーカーの発現を指標に歯根膜前駆体細胞をスクリーニングした.その結果, scleraxis, growth and differentiation factor (gdf)5, ephA4, six-1およびtype I collagen α1を高発現するが,骨マーカー遺伝子であるbone sialoprotein, osteocalcinおよびosterixはほとんど発現しないMDF-G5の樹立に成功した.MDF-G5の分化能力を解析する目的で,重症複合性免疫不全症(SCID)マウスへの移植実験を行ったところ,MDF-G5移植片内では歯根膜様構造物の形成が観察され,オキシタラン様構造物の形成も観察された.これらの結果より,MDF-G5は歯根膜細胞前駆体の特性を有する細胞株であり,歯根膜形成機構の解析のみならず,歯周組織再生医療の開発にも有効な培養システムであることが示唆された.

著者関連情報
© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
次の記事
feedback
Top