日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
歯科衛生士教育機関における診療補助実習 : 第3報 臨床実習における保存処置について
吉田 隆有泉 祐吾田野 ルミ細川 壮平小貫 瑞穂大迫 美穂古澤 成博槇石 武美
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 51 巻 1 号 p. 72-81

詳細
抄録

歯科衛生士の業務の一つに,歯科診療の補助がある.われわれはこれまでに,仮封ならびに根管処置時における診療補助を採り上げ,歯科衛生士教育機関における歯科保存処置に対する診療補助実習カリキュラムの検討を行ってきた.その結果,仮封や根管処置時の診療補助に関する実習カリキュラムを学内基礎実習で行うことは大変有意義であることを報告した.ところで,卒業前の総仕上げ実習として臨床実習を行っているが,多くの歯科衛生士教育機関は附属の医療施設をもたない.そのため臨床実習を行うには,学外の医療施設に依頼して実施することが多い.しかしながら学生全員を同一医療施設で同時に実習を行うことは困難で,複数の医療施設に学生を数人ずつ配置し実習を行っているのが現状である.そのため,医療施設によって実習内容に相違が生じる可能性がある.そこで本研究では,学内で行う診療補助カリキュラム内容が学外で行う臨床実習と有機的に関連づけられているか否かを調査する目的で,臨床実習後の学生にアンケート調査を行い検討した.歯科衛生士学生として,平成15年度と平成16年度の,埼玉県立大学短期大学部と静岡県立大学短期大学部の歯科衛生学科第2学年の学生合計139名を対象とし,臨床実習終了後に各学生に対しアンケート調査を行った.アンケートの調査内容は,学生が配属された医療施設での1日の診療における保存系治療の比率と,保存系治療のなかからコンポジットレジン修復と根管治療を採り上げ,各医療施設での両処置に関する現状を調査した.アンケート調査の回答は137名(回答率98.6%)から得られた.アンケートの結果から,以下の結果が得られた.1.ほとんどの医療施設で,1日の診療における保存治療の比率は40%以上であった.2.コンポジットレジン修復に用いるレジンの種類はほとんどが光重合型であったが,光照射器の操作者は医療機関によって異なっていた.3.根管治療に用いられる仮封材(剤)や仮封方法,根管充填法についても医療機関に相違がみられた.以上から,学内の診療補助カリキュラムと学外での臨床実習内容とでは,有機的に連携をもつ部分ともたない部分とがあることが判明した.卒業前の臨床実習という観点から考えれば,学内での教育と学外での臨床実習内容の相違や,学外の医療施設間における臨床実習内容の相違は避け,なるべく実習内容の画一化が図られることが望ましいものと思われた.

著者関連情報
© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top