日本歯科保存学雑誌
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原著
エナメル質再石灰化過程におけるミネラルおよび硬さプロファイル分析
冨永 貴俊向井 義晴杉崎 新一郎岩谷 いずみ鈴木 勝寺中 敏夫
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2008 年 51 巻 2 号 p. 123-129

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抄録

エナメル質の脱灰過程における硬さの減少率はミネラルの減少率を上回り,ミネラル密度と断面硬さの平方根との間に関係式が成立することが報告されている.しかしながら,再石灰化過程におけるミネラルプロファイルと硬さプロファイルとの関連を調べた報告は少ない.本研究の目的は,再石灰化過程におけるエナメル質のミネラル密度の回復と断面硬さの回復とを比較検討することである.ウシ歯冠部エナメル質をエポキシ樹脂に包埋後,試験面を耐水研磨紙により研磨した.表層下脱灰病巣は,乳酸ゲルを用い37℃の恒温槽にて10日間静置して作製した.その後,再石灰化溶液に37℃で2週間浸漬した.脱灰および再石灰化期間終了後,試片を薄切し,顕微エックス線装置にてTransversal Microradiography(TMR)撮影を行い,分析用ソフトを使用してミネラルプロファイルを作成した.同様に,超微小押し込み硬さ試験機を用い,断面硬さ測定を行い,硬さプロファイルを作成した.TMR画像では典型的な表層下脱灰病巣が確認され,再石灰化溶液浸漬2週間後では病巣のエックス線不透過性が上昇し,ミネラル喪失量の減少も確認された.ミネラルおよび硬さプロファイルの比較では,2週間の再石灰化後では表層および病巣体部のミネラルプロファイルが68〜87%の回復率を示したのに対し,硬さプロファイルでは30〜50%であった.また,病巣深度30μmにおける硬さ測定値からの回復率は30.5%であったのに対し,ミネラル密度を換算式に代入して得た硬さ回復率は39.1%であった.以上の結果は,再石灰化処理2週間という比較的短期間の場合においても,脱灰試験で用いられた硬さからミネラル密度への換算式は当てはまらない可能性があること,および硬さ回復はミネラル回復を下回ることが示された.今後,再石灰化期間をさらに延長した場合のミネラル密度と断面硬さの回復について検討していくことが重要であると考えられた.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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