日本歯科保存学雑誌
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ガンマ線照射が根管治療に及ぼす影響 : 根管洗浄効果および根管充填の封鎖性について
石村 瞳福元 康恵菊地 和泉吉岡 隆知高橋 英和須田 英明
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2008 年 51 巻 2 号 p. 147-155

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抄録

目的:本研究の目的は,ガンマ線照射した歯について,根管洗浄の効果および根管充填の封鎖性を評価することである.材料および方法:<実験1>技去ウシ前歯20本を非照射群,60Gy照射群,3kGy照射群,および30kGy照射群の4群に分類した.被験歯をすべて縦断し,6% NaClO(洗浄群)あるいは精製水(精製水群)で根管洗浄を行った.洗浄終了後,被験歯象牙質のSEM像を評価し,スコア化した.スコア値についてロジスティック回帰分析を用いて有意水準5%で統計学的に解析した.<実験2>抜去ヒト下顎小臼歯94本のうち4本をコントロール群とし,残り90本を非照射群,ガンマ線照射後根管充填群,および根管充填後ガンマ線照射群に分類した.それぞれの群をさらに10本ずつ3群に分類し,ガッタパーチャポイント(GP)+シーラペックス(A群),Resilon™+Epiphany™シーラー(B群),あるいはGP+MetaSEAL™(C群)を用いて根管充填を行った.根管充填終了後,0.06%メチレンブルー溶液を注入したポリプロピレンチューブを歯根上部に取り付け,根尖部2mmがガラス容器内の精製水に浸漬するように実験系を設定した.浸漬後1,4,8,15および30日目に,歯根を通じて精製水中へ溶出した色素の吸光度を分光光度計にて測定し,ANOVAおよびTukey-Kramer法を用い,有意水準5%にて統計解析を行った.結果:<実験1>洗浄群と精製水群ではそれぞれ,非照射群と3kGyおよび30kGy群間のスコア値に有意差が認められた.また,照射の有無,線量にかかわらず,洗浄群と精製水群間には有意差が認められた.<実験2>実験開始後30日目におけるメチレンブルー漏洩量は,いずれの照射群でも,A群とC群間で有意差を認めた.いずれの根管充填群でも,非照射群,ガンマ線照射後根管充填群および根管充填後ガンマ線照射群間でメチレンブルー漏洩量に有意差は認められなかった.結論:本研究の結果,治療用ガンマ線照射によって根管洗浄効果および根管充填の封鎖性は影響を受けないことが明らかとなった.また,歯根に高線量のガンマ線を照射した場合,根管洗浄効果に変化が生じることが示唆された.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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