日本歯科保存学雑誌
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サイクロスポリンA投与ラットにおける歯槽骨の組織学的解析
美原(和田) 知恵瀬戸 浩行堀部 ますみ木戸 淳一永田 俊彦
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2008 年 51 巻 3 号 p. 246-255

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抄録

サイクロスポリンA(CsA)は,免疫抑制剤として臓器移植患者や自己免疫疾患患者に広く用いられている.CsA服用の副作用として腎障害,肝障害,および歯肉増殖症が挙げられるが,これらの副作用に加えて最近,CsAによって骨粗鬆症が誘発されることが実験的にも臨床的にも報告されている.一方,骨粗鬆症を併発している歯周病患者では付着の喪失が大きく,骨粗鬆症は歯周病のリスクファクターの一つとして知られている.このことから,CsAは,歯周病において歯肉増殖症を誘発させるだけでなく,骨代謝にも影響を及ぼしていると考えられる.しかしながら,CsAの歯槽骨代謝に及ぼす影響については不明な点が多い.そこで本研究では,CsAがラット歯槽骨に及ぼす影響について,ラット実験モデルを用い,組織学的検索を行った.15日齢雄性Fischer系ラットを用い,実験群ではCsA(50-200mg/kg)を含む粉末飼料を,対照群では粉末飼料のみを食餌として与えた.飼育開始後8,16日および30日目に両群より下顎骨を採取し,CsAの下顎骨への影響を検討した.マイクロCT解析では,第一臼歯セメントエナメル境(CEJ)から歯槽骨骨頂(ABC)間の距離(CEJ-ABC)の計測,および周囲歯槽骨の三次元的な形態計測を行った.また,組織学的分析では同試料の脱灰薄切切片を作製し,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を行い,TRAP陽性破骨細胞数,さらに骨芽細胞数についても測定を行った.マイクロCT解析の結果,実験期間を通じて実験群と対照群でCEJ-ABC間距離に有意な差は認められなかった.CsA8日投与群では歯槽骨の形態に対照群と差は認められなかったが,16日および30日のCsA投与群では対照群と比較して有意に同部の骨密度および骨梁幅の減少が観察された.さらに,骨吸収の指標である骨の表面積/体積は実験群で有意な増加が認められた.一方,TRAP陽性破骨細胞数および骨芽細胞数は,飼育開始8,16日および30日のいずれも両群で差が認められなかった.これらのことから,CsAは単独では歯周炎を発症させないが,骨代謝に影響を及ぼしていることが確認できた.本研究の結果から,CsAは歯周炎における歯槽骨吸収に対して増悪因子として作用することが示唆された.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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