日本歯科保存学雑誌
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原著
歯科医師会会員の院内感染予防対策意識の現状と課題 : (第3報)アンケートの各回答グループ間における「スタンダードプリコーション」の理解度の比較
小西 秀和高瀬 浩造砂川 光宏荒木 孝二加藤 熈
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2008 年 51 巻 4 号 p. 426-434

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抄録

近年,一般開業歯科診療所や病院歯科において,血液媒介感染症等に対する院内感染予防対策が重要な医療安全上の課題となってきている.著者らはこの現状を踏まえ,歯科医師会会員を対象に院内感染予防対策に関する調査的研究を行ってきた.本論では,歯科医師会への新入会員の歯科医師のデータを前報のデータに加えて,感染予防対策の重要なキーワードである「スタンダードプリコーション」(以下,SP)の,アンケートの各回答グループ間における理解度の相違を,分散共分散行列主成分分析(PCA)と一元配置分散分析(ANOVA),および平均値の差の検定(t検定)により統計学的に比較解析を行い,評価した.院内感染予防対策のアンケート調査結果(調査対象者総数:760名,回答者総数:194名,回収率:25.5%)のPCAとANOVAの解析により,説明変数にSPの具体的方法の基本に関する4変数,血液媒介感染症等に対する理解に関する4変数,患者使用後の歯科用器材の滅菌・消毒方法に関する4変数,および歯科診療室の管理運営方法に関する4変数を選択した場合は,SPの理解度に対して各グループ間で有意差が認められた(p<0.05)が,感染予防対策のその他の事項に関する4変数を選択した場合は,SPの理解度に対して各グループ間で有意差が認められなかった(p≧0.05).さらにPCAとt検定の解析により,上記と同一の説明変数の組み合わせ,計5組を選択した場合に,PCAの第一主成分で最高のスコアを示した「グローブの着用交換」,「エイズ・結核患者来院時の対応」,「印象トレー・石膏模型・ワックスバイトの消毒方法」,「院内感染予防対策の教育方法」および「歯科医師の年齢層」の各変数において,その実践度の高いグループまたは若年齢層のグループでは,他のグループに比較してSPの理解度が有意に高かった(p<0.05).以上のことから,歯科医療従事者のSPの理解度と院内感染予防対策の実践との間には密接な関係があり,SPの理解度が高いグループでは,日常的な歯科臨床および歯科診療室の管理において十分な院内感染予防対策が行われている可能性が高いことが示唆された.

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