日本歯科保存学雑誌
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原著
歯周治療における口腔関連QOLのアセスメントに関するパイロット研究
菊池 百美齋藤 淳松本 信哉早川 裕記上島 文江益田 仁美佐藤 陽子古澤 成博槙石 武美
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2009 年 52 巻 2 号 p. 138-144

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抄録

現在,医療において生活の質(Quality of Life:QOL)に焦点をあてた臨床・研究の重要性が高まりつつある.歯周治療では従来,患者の生物医学的データは重要視されてきたが,QOLを客観的に評価する試みは少なかった.患者中心の包括的な歯周治療を行うためには,QOLを含めた心理・社会・行動面に対する認識が必須であると思われる.そこで本研究では口腔関連QOLの歯科衛生モデル(OHRQL)を使用し,歯周炎患者のQOL評価を試み,その意義について検討した.歯周炎患者31名(平均年齢54.1歳,男性10名,女性21名)を対象とし,初診時にOHRQL質問紙の日本語版を使用し,口腔関連QOLのアセスメントを行った.また,担当歯科医師および歯科衛生士を対象に,OHRQL導入に関する意識調査を実施した.その結果,歯周炎患者群のOHRQLスコアは,健常者群のスコアに比べて有意に高い値を示しており,QOLに問題があると思われた.OHRQL領域ごとのスコアの比較では特に「痛み」「食事・咀嚼」「心理的機能」に問題を抱えている傾向が認められた.OHRQLスコアとプロービングデプス4mm以上の部位率との間には有意な関連が認められた.「健康認識」領域の回答では,約6割が自身の口腔の健康状態は悪いと認識していた.担当歯科医師および歯科衛生士に対する意識調査の結果,すべての担当者はアセスメント後,口腔関連QOLは臨床的・教育的に意義があるとの認識を示していた.以上のことから,OHRQLのアセスメントを臨床に導入し,歯周炎患者の口腔関連QOLの客観的な評価を行えることが示唆された.OHRQLの各領域に対応した介入を計画,実施することにより,歯周炎患者個別のQOLに配慮した歯周治療の展開が可能になると思われた.

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© 2009 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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