日本歯科保存学雑誌
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新規HEMA非含有1液性ワンステップ接着システムに関する研究 : 歯質処理面および接着界面の微細構造と辺縁封鎖性の評価
韓 臨麟石崎 裕子福島 正義興地 隆史
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2009 年 52 巻 3 号 p. 279-287

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抄録

1液性ワンステップ接着システムは,エナメル質に対する処理能力が低い傾向にある.この点の改良を意図して酸性モノマーを増量し,さらにHEMA非含有とした1液性ワンステップ接着システム(G-Bond Plus®,ジーシー,以下,GBP)が開発された.本研究では,この新規1液性ワンステップ接着システム適用後の歯質処理面・接着界面の微細構造および辺縁封鎖性について,既存のその他の1液性ワンステップ接着システムと比較しながら評価を行った.被験材料としてGBP,G-Bond^®(ジーシー,以下,GB),Bond Force®(トクヤマデンタル,以下,BF)およびClearfil tri-S Bond®(クラレメディカル,以下,TS)を用い,以下の各実験を行った.1.歯質処理面の観察:ヒト抜去大臼歯歯冠部より採取したエナメル質と象牙質を含む横断面試片に対し,各実験材料の1液性ワンステップ接着システムによる歯面処理を行った後に,走査電子顕微鏡(SEM)および共焦点レーザー顕微鏡(LSCM)により処理歯面の微細構造観察を行った.2.接着界面および辺縁封鎖性の観察:ヒト抜去小臼歯の歯頸部に,歯冠部と歯根部を含めた幅4mm,深さ2mmの箱形窩洞を形成し,各1液ら生ワンステップ接着システムによる歯面処理を行った後,フロアブルレジンで窩洞を充填し,即日仕上げ研磨を行った(各n=5).試片は蒸留水中,37℃恒温箱に1週間保管した後,1.5kgf,14万回の繰り返し荷重を加えた.その後,50%硝酸銀溶液に24時間浸漬,現像処理を加えた後,頬舌側方向で試片を縦断した.これらの試片について,実体顕微鏡下で銀粒子の浸入を観察,スコア化した後,SEMを用いて接着界面を観察することによって,以下の結論を得た.1.GBPおよびTS塗布歯面では,GBあるいはBF塗布歯面と比較してエナメル小柱構造や象牙細管の開口などがより明瞭に認められた.LSCM観察では,処理部・非処理部境界部の段差の形成が,GBP・TSではGB・BFと比較して著明であった.2.辺縁封鎖性の指標となる銀粒子の浸入程度については,エナメル質辺縁部,象牙質辺縁部ともGBP・TSの適用例ではGB・BFの適用例と比較して軽度な傾向にあったが,統計学的有意差はみられなかった(p>0.05,Kruskal-Wallis検定).3.接着界面のSEM観察の結果として,エナメル質窩縁部ではGBの適用例がその他3種の1液性ワンステップ接着システムと比較してギャップ形成が明瞭であり,象牙質窩縁部ではGB・BFの適用例がGBP・TSの適用例と比較してギャップの形成や銀粒子の浸入が明瞭である傾向を認めた.以上の実験結果から,GBPではエナメル質と象牙質の双方に対して,GB,TSおよびBFと比べて同等以上の歯面処理効果や辺縁封鎖性が備えられていることが示唆された.

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