日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
不死化イヌ歯髄細胞株の樹立とその特性の解析
半田 慶介小池 俊之清野 透斎藤 隆史
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 52 巻 3 号 p. 288-294

詳細
抄録

ヒトなどの初代培養細胞では,培養ストレスによる細胞老化に加えヘイフリック限界と呼ばれる分裂回数の制限があるため,in vitroにおいて初代象牙芽細胞を用い十分な解析を行うことは困難である.このため,象牙芽細胞の分化機構に関して不明な点が多く残されている.したがって細胞寿命を延長することにより,これまで不明であった象牙芽細胞分化機構を詳細に分析できるものと思われる.本研究の目的は,ヒトテロメレース触媒サブユニット(hTERT)および16型ヒトパピローマウイルス(HPV)のE6,E7遺伝子をイヌ歯髄細胞へ遺伝子導入することにより,不死化イヌ歯髄細胞株を樹立し,その特性を解析することである.ビーグル犬前歯から採取したイヌ歯髄細胞(DDP)に,レトロウイルスベクターを用いてhTERTおよびHPV E6,E7遺伝子を遺伝子導入して不死化細胞株DDP(E6E7/TERT)を樹立した.樹立した細胞のin vitroにおける石灰化能は,Alkaline phosphatase(ALPase)染色,アリザリンレッド染色によって評価した.また,硬組織関連遺伝子(osteopontin,type I collagen,Runx2)の発現をRT-PCR法により分析した.その結果,樹立したDDP(E6E7/TERT)は正常細胞と比較して寿命が延長していただけではなく,石灰化能を維持しており,硬組織関連遺伝子を発現していることが確認された.

著者関連情報
© 2009 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top