日本歯科保存学雑誌
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原著
バイオアクティブ修復材料によるう蝕象牙質の再石灰化
宮内 貴弘
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2009 年 52 巻 6 号 p. 469-482

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抄録

う蝕検知液を指標に保存されたう蝕象牙質内層は,う蝕原性細菌により一部脱灰しているが,適切な接着修復により経時的に生理的再石灰化を起こす.この生理的石灰化に加え,修復材料により再石灰化が促進,歯質の強化が起これば,さらなる長期接着耐久性が期待できる.本研究では,ヒト抜去大臼歯に作製した人工う蝕象牙質にさまざまなイオンを徐放するS-PRG(Surface Reaction Type Pre-Reacted Glass-ionomer)フィラーを含有したバイオアクティブ修復材料による修復を行い,修復1週後(1w)および12週後(12w)の象牙質接着界面周囲の超微小押し込み硬さ,元素組成分析およびSEM観察を行い,う蝕象牙質の再石灰化についてin vitroにおける検証を行った.ヒト抜去大臼歯に乳酸およびう蝕原性細菌を用いて,人工う蝕象牙質を作製した.窩洞内をう蝕検知液で染色し,赤染した象牙質をスチール製ラウンドバーにより1回削除後,次に示す2種類のレジン接着材とコンポジットレジンにより修復を行った.S-PRGフィラー含有バイオアクティブ修復材料として,フルオロボンドシェイクワンおよびビューティフィルフローF02(SO),ネガティブコントロールとしてクリアフィルメガボンドおよびクリアフィルマジェスティLV(MB)を用いた.修復後,リンゲル液を用いて15cm H2Oの歯髄内圧を再現し,1wおよび12w保管した.保管後,試料を半切し,通法に従い鏡面研磨を行い,超微小押し込み硬さ試験機による接着界面周囲の硬さ測定を行った.測定荷重は1mNとし,5μm間隔で200点測定後,さらに100μm間隔で40点測定を行い,1歯につき3部位測定を行った(n=3).硬さ測定値は,t検定および一元配置分散分析,Tukey多重比較(α=0.05)にて統計解析を行った.半切したもう一方の試料を用い,エネルギー分散型X線分析(EDX)による接着界面の元素組成分析およびFE-SEM観察を行った.硬さ測定において,12wでは脱灰の影響を最も強く受けている接着界面から5μm,そしてそこから90μmまでの測定点において,SOがMBより高い硬さ値を示した.またSOにおいては,接着界面から5μmまでの範囲そして80μmまでの測定点で,1wより12wのほうが高い硬さ値を示した.EDXの結果から,MB-1wではCaおよびPの比率が少なかったが,SO-1wでは,SO-12wおよびMB-12wと同程度のCa,Pが確認された.さらに,SOにおいては歯質中にSrの存在する可能性が示唆された.以上の結果より,S-PRGフィラー含有バイオアクティブ修復材料には,象牙質の再石灰化を促進する可能性が示唆された.

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© 2009 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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