日本歯科保存学雑誌
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原著
新規フィラーを用いたレジン添加型グラスアイオノマーセメント修復材のフッ素リリースおよびリチャージ効果に関する基礎的研究 : 辺縁封鎖性と周囲窩壁に対するフッ素取り込み量の観察
関 秀明小川 正明加藤 喜郎
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2010 年 53 巻 3 号 p. 244-256

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抄録

フッ素徐放性材料から放出されるフッ素イオンは,窩壁および周囲歯質に拡散し,耐酸性向上,脱灰病巣の再石灰化促進効果など,歯質強化や修復後の二次う蝕抑制に有効に作用することが知られている.近年これらの効果を期待して,フッ化物を含有する修復材料が開発されている.本研究では,フッ素徐放性を有する修復材料を用いてこれらの修復材の辺縁封鎖性,および周囲歯質に対するフッ素の取り込みについて観察を行い,フッ素徐放(リリース)能やフッ素取り込み(リチャージ)能について検討を行った.ウシ下顎前歯の唇側歯頸部に,近遠心径5.0mm,切縁歯頸側径3.0mm,深さ3.0mmの歯頸部椀型窩洞を形成した.Beautifil®とImperva Fluoro Bond®(松風,BF),Reactmer®とReactmer Bond®(松風,RR),Clearfil® STとClearfil® Mega Bond®(クラレメディカル,CM),Fuji II LC Capsule®とCavity Conditioner(ジーシー,F II),HY-Bond Glasionomer-F®(松風,HY)を,メーカー指示の方法に従って填塞した(n=5).48時間後仕上げ研磨を行い,修復物表面を除く全歯面にネイルエナメルを塗布してマスキングを行った.試料はコントロールとして14日間37℃蒸留水中に保管したC群と,同保存期間中,24時間ごとにフッ素濃度1,000ppmのフッ化ナトリウム溶液に5分間浸漬,および4℃と60℃のサーマルサイクリングを2,500回行った群をF群とし,それらの試料に色素浸透試験を行った.その後,窩洞中軸部を縦断して両側切断面の窩壁総距離と色素浸透距離を計測し,色素浸透距離率を百分率で算出して辺縁封鎖性の比較検討を行った.その後,窩洞内の窩縁部エナメル質,窩縁部象牙質および窩底部象牙質についてEPMAによる線分析を行って,歯質へのフッ素の取り込み状況を観察した.結果についての統計学的解析はKruskal-Wallis testおよびMann-Whitney U-testを用いた(p<0.05).色素浸透による辺縁封鎖性試験の結果,C群ではCM,F II,BF,RR,HYの順,F群ではCM,BF RR,F II,HYの順で,前者ほど良好な結果を示した.C群のCM-HY,F II-HY,F群のBF-HY,RR-HY,CM-HY間で,HYは有意に劣っていた.各材料ともサーマルサイクルにより色素浸透距離率が増加し,辺縁封鎖性が悪くなる傾向にあったが,HYのみC群とF群間で有意差が認められ,BE,RR,CM,F IIでは有意差はなかった.EPMAによる観察で,最も深部までフッ素の浸透がみられたのはHYとF IIで,平均約200μmであった.それに比較してBFは平均約40μm,RRは平均約90μmであった.CMではフッ素の浸透を認めなかった.またC群とF群との比較において,各修復物ともに窩洞のどの部位においても,フッ素溶液浸漬によるフッ素の取り込み深さに有意差は認められず,修復物のもつフッ素のリチャージ機能が窩壁へのフッ素取り込み深さに与える影響は認められなかった.

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© 2010 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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