日本歯科保存学雑誌
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原著
磁場下プログラムフリーザーを用いた歯髄細胞の凍結保存に関する研究
増田 宜子大場 崇史山田 嘉重藤島 昭宏宮本 洋一木村 裕一上條 竜太郎
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2010 年 53 巻 3 号 p. 274-280

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抄録

近年,修復象牙質を産生する象牙芽細胞様細胞に分化する歯髄の幹細胞の存在が注目されてきている.抜去歯を保存する際,歯髄組織も将来有効に活用できる可能性があると考えられることから,今回,Cells Alive System(以下,CAS)プログラムフリーザー®を用いてラット下顎骨を凍結・解凍し,細胞の特性の変化を通常の-80℃で凍結・解凍した場合と比較検討することを目的に,本研究を実施した.5週齢の雄性Wistarラット2匹の下顎骨をα-MEM培地に,そして6匹の下顎骨をセルバンカー1®に浸漬し,CASプログラムフリーザー®にて凍結し1カ月後に37℃ water bathにて解凍した.下顎切歯からそれぞれ歯髄組織を摘出し,collagenase,trypsin,EDTAを含む酵素液にて細胞を分離し,5% CO2条件下にて10% FBS含有α-MEM培地で培養し,トリパンブルー染色を行った.1週間後に12ウェルプレートに4×104個/wellにて継代し,300μg/ml β-glycerophosphate,50μg/ml ascorbic acidを培地に加えて培養した.継代7,14日にてそれぞれtotal RNAを精製しcDNAを合成,Dspp,osteocalcin,TGF-β1遺伝子の発現の変化をRT-PCRによって調べた.さらに一部の細胞は,ヤギ抗actin(C末端ヒトactin)を用いて染色し,共焦点レーザー顕微鏡にて細胞の構造の変化を観察した.コントロールとして,下顎骨を-80℃で凍結・解凍したものを同様に調べた.α-MEM培地を用いCASプログラムフリーザー®で凍結した場合は解凍直後の細胞生存率は約3%であり,セルバンカー1®にて凍結した場合では約22%であった.通常の-80℃凍結では,セルバンカー1®に浸漬し凍結した場合でも細胞生存率は約7%であった.CASプログラムフリーザー®を用いセルバンカー1®にて凍結したものは,β-glycerophosphate,ascorbic acidをα-MEM(FBS含有)に加えて培養した場合ではDspp,osteocalcin,TGF-β1遺伝子の発現が認められた.共焦点レーザー顕微鏡にて解凍後の細胞を観察したところ,CASプログラムフリーザー®を用いセルバンカー1®にて凍結したものは細胞膜が破壊されずに残っていた.CASプログラムフリーザー®を用いて凍結・解凍した歯髄は,通常の-80℃で凍結・解凍した場合と比較して細胞の生存率が有意に高く,将来歯髄を保存し活用するためには有効であると示唆された.凍結保存の際は,浸漬する保存液によって細胞の状態が影響を受けたため,保存液の役割も重要であることが判明した.

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© 2010 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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