日本歯科保存学雑誌
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原著
自由電子レーザー照射したウシ象牙質の昇温と形態変化 : Er:YAGレーザーとの比較
根本 章吾岩井 仁寿鈴木 英明神谷 直孝岩井 啓寿壹岐 宏二池見 宅司
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2010 年 53 巻 4 号 p. 419-427

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抄録

エルビウムヤグ(以下,Er:YAG)レーザーあるいは歯科用レーザーのさらなる改良・開発を目的とした研究では,波長可変性を有する自由電子レーザー(以下,FEL)が有益な情報をもたらしてくれる.そこで,著者らは日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設所有のFELを使用し,象牙質蒸散時の昇温と形態変化について調べることを目的として実験を行った.比較対象としては,歯科臨床で使用されているEr:YAGレーザーを使用した.その際の照射条件は,波長ならびに照射エネルギー密度,毎秒の繰り返しパルス数(以下,pps),照射時間を同一にして行い,FELは無注水下,Er:YAGレーザーでは無注水下と注水下にて照射した.被照射体にはウシ象牙質を使用して,それぞれのレーザーを照射した際の照射部(以下,照射側)および照射部直下の試料背面(以下,反対側)の温度を放射温度計にて測定し,昇温を求めた.さらに,照射部象牙質の形態変化について電子顕微鏡(以下,SEM)による観察を行った.その結果,以下の結論を得た.1.3ppsと5ppsの両条件において,照射側と反対側ともにFELが最も低い昇温で,注水下Er:YAGレーザー,無注水下Er:YAGレーザーの順に高い昇温を示した.おのおののレーザー条件について3ppsと5ppsを比較すると,5ppsのほうが照射側と反対側のいずれにおいても高い昇温を示した.2.照射試料表層のSEM観察では,FELにおいて蒸散部の径は約200μmで,Er:YAGレーザーのC400Fチップでは約500μmの径となることが示された.3.照射試料縦断面のSEM観察では,3ppsと5ppsの各試料において同様な象牙質面の形態が観察され,FELではすべての試料において象牙細管が明瞭に観察された.注水下Er:YAGレーザーでは,溶岩状に変成した組織と象牙細管の認められる部分の混在している像が観察された.無注水下Er:YAGレーザーでは,溶岩状に変成した組織で全面が覆われている形態が観察され,一部に象牙細管が認められた.

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