日本歯科保存学雑誌
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原著
ワンステップボンディング材の劣化について
藤田 光岩井 仁寿岡田 珠美鈴木 英明西山 典宏池見 宅司
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2010 年 53 巻 6 号 p. 611-618

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抄録

現在市販されているワンステップボンディング材は,長時間の保管や高温度下での保管により,歯質に対するレジンの接着強さが低下する傾向がある.本研究では,ワンステップボンディング材で処理した歯質に対するレジンの接着強さが低下する原因を検討することを目的とし,ワンステップボンディング材に含まれるモノマーの変質に及ぼす影響を,せん断接着強さと核磁気共鳴法(13C NMR法)を用いて比較検討した.ワンステップボンディング材としてボンドフォース(トクヤマデンタル)を使用し,0,3,7,14週間,40℃恒温槽中に保管したものを試料とした.13C NMRの試料として,ボンドフォース300mgとジメチルスルポキシド250mgをNMR管に精秤した後,振盪・攪拌して13C NMR法により解析を行った.また同じ保管期間の試料を用いて,エナメル質および象牙質とのせん断接着強さの測定も行った.その結果,ボンドフォース水溶液を40℃恒温槽に保管すると,メタクリル酸のカルボキシル基カルボニルカーボンおよびエチレングリコールのメチレンカーボンに帰属されるNMRピークが検出され,保管時間が長くなるに従いそれらのNMRピーク強度は増大した.ボンドフォースを40℃で14週間保管すると,HEMAのメタクリロキシエステル基は22.39%分解した.これはHEMAのエステル基が加水分解し,メタクリル酸およびエチレングリコールが生成されたからである.また,エナメル質との接着強さは,保管期間0日(コントロール)の場合16.2MPaであったが,保管期間が長くなるにつれて接着強さは低下し,保管期間が14週間では5.5MPaと大きく低下した.またエナメル質の接着強さと同様に,象牙質の接着強さは,保管期間が長くなると,接着強さは12.7MPaから6.0MPaまで低下した.歯質に対するレジンの接着強さは,ワンステップボンディング材中のHEMAが保管期間とともに加水分解して変性し,接着強さが低下した.以上のことから,歯質に対するレジンの接着強さの低下はワンステップボンディング材の劣化に起因することがわかった.

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© 2010 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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