日本歯科保存学雑誌
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原著
TMPT配合レジンコーティング材の開発研究
周 秦
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2012 年 55 巻 3 号 p. 195-201

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抄録

目的:今日の間接的修復処置では,インレーや全部冠の形成後にレジンコーティング法が応用されるようになってきた.レジンコーティング法を採用することによって,形成歯面の汚染防止や,生活歯における歯髄保護や象牙質知覚過敏を予防することができる.最近では,コンポジットレジン修復のボンディングとしてだけでなくレジンコーティングを目的とした1ステップ型接着材のハイブリッドコート(HyC)が市販されるようになった.著者は,本材料の象牙質接着性のさらなる向上を目指して,HyCコート材にトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)を配合したT33コート材を試作し,HyCコート材よりも高い剪断接着強さが得られた.しかし,その剪断接着強さはHyCコート材に比べて有意に高いものではなかった.そこで,本研究ではT33コート材の象牙質接着性の改善を目的として,T33コート材中の光増感剤であるカンファーキノン(CQ)の量を3倍にしたレジンコーティング材のNCコート材を新規に試作した.材料と方法:コートスポンジに関しては,N-フェニルグリシン(NPG)の含有量の異なるコートスポンジを使用して,NCコート材をそれらのコートスポンジで混和した試料の象牙質剪断接着強さを調べた.さらに,その際の象牙質接着性に影響を与えると考えられる重合率に関して検討を行い,CQとNPGの適切なモル比について調べた.成績:1.T33コート材中のCQ量を重量で1〜15倍にしたCQコート材の象牙質剪断接着強さは,CQを3倍量としたコート材において最も高い平均値を示したが,すべての試料間で有意差は認められず,CQを増量しても剪断接着強さの向上は認められなかった. 2.NPG含有量の異なるコートスポンジをNCコート材に応用した場合,象牙質勇断接着強さはCQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3において上昇し,HyCコート材と比べて有意に高い値を示した.しかし,NPGのモル比が11.7, 14.7と多くなると剪断接着強さは低下した. 3.NPG含有量の異なるコートスポンジを用いてNCコート材を重合したときの重合率は,CQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3で上昇した.しかし,NPGのモル比が11.7, 14.7と多くなると重合率は減少した.結論:以上のことから,T33コート材中のCQ量を重量で3倍にしたNCコート材は,CQに対するNPGのモル比が4.4あるいは7.3のコートスポンジを使用することで,象牙質勇断接着強さと重合率は向上することが明らかになった.

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© 2012 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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