2012 年 55 巻 5 号 p. 340-348
目的:超音波測定法を用い,光強度およびプライマー塗布の有無がデュアルキュア型コンポジットレジンセメントの重合硬化挙動に及ぼす影響について検討した.材料と方法:供試したレジンセメントは,ビスタイトII(トクヤマデンタル,BT),リンクマックス(ジーシー,LM)およびレジセム(松風,RC)の3製品である.超音波送受信装置を用い,試片の厚さとの関係から縦波音速を求めた.重合硬化挙動の測定は,照射を行わない,あるいは200mW/cm2および600mW/cm2の条件で照射を行う3条件とし,その各条件にプライマーを塗布したものと塗布しないものの合計6条件で行った.さらに,硬化させたレジンセメント試片の研磨面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した.成績:供試したいずれのレジンセメントにおいても,音速は照射の有無にかかわらず経時的に上昇したが,光強度の違いとプライマーの有無によって,製品による違いが認められた.照射を行わない条件では,光強度が600mW/cm2と比較して,プライマー塗布の有無にかかわらず,音速の上昇は緩除になるとともに,いずれの製品においても最終的に到達する音速の値は有意に低くなった.結論:光強度とプライマー塗布の有無は,レジンセメントの重合硬化挙動に影響し,その程度は製品間で大きく異なっていた.これらのレジンセメントを臨床使用するにあたっては,製造者指示のプライマーを使用するとともに,光照射条件に留意すべきであることが示唆された.