日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
歯科用マイクロスコープおよび超音波装置を使用した根管内破折器具の除去に関する臨床研究
鷲尾 絢子永吉 雅人平田-土屋 志津市丸 美希西野 宇信中川 愛加廉 〓勲西藤 法子吉居 慎二寺下 正道北村 知昭
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 55 巻 6 号 p. 365-372

詳細
抄録

目的:不用意な根管治療によって生じた根管内器具破折により,破折片より先の根管および根尖孔外の感染除去は困難となり予後不良の経過を辿ることが多い.また,根管内破折器具を除去するために根管自体を大きく拡大すると,根管壁穿孔や歯根破折といった二次的な偶発事故を招くこともある.今回,九州歯科大学附属病院保存治療科において実施した根管内破折器具の除去成功率について調査を行った.材料と方法:2008年度から2010年度の3年度間に本学附属病院保存治療科を受診した初診患者のうち,根管内破折器具が存在する歯の再歯内治療を行った31名35根管を対象とした.歯科用マイクロスコープ下において超音波装置および超音波チップを使用して実施した根管内破折器具除去症例の紹介・非紹介の別,根管内破折器具が存在する歯の歯種・根管の別・湾曲の有無,1根管当たりの破折器具数・存在位置,および除去成功率について調査した.結果:根管内破折器具が存在した症例のなかで,破折片除去を目的とした紹介患者の割合は約63%であり,破折器具が多く認められたのは下顎大臼歯近心根であった.1根管当たりの破折器具数は最大3本であったが,ほとんどは1本であり,その位置は根尖部あるいは根中央部で,根管上部では認められなかった.また,根管内破折器具の除去成功率は約89%で,ほかの方法による報告と比較して高い成功率を示し,機能回復も図られた.結論:以上の結果より,歯科用マイクロスコープ下で実施する超音波器具を併用した根管内異物除去法は,破折片除去率が高く有用であることが示された.

著者関連情報
© 2012 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top