日本歯科保存学雑誌
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薄膜スクラッチ試験を応用したワンステップボンディング材の接着強さ
日下部 修介堀田 正人
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2013 年 56 巻 4 号 p. 298-309

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抄録

目的:歯質接着強さの評価法は,コンポジットレジン・ボンディング材・歯質の3層構造の試料を引き離すのに必要な力(破断応力)で示される引張り接着強さや勢断接着強さによる測定が用いられている.しかし,破断応力はボンディング材と歯質の接着界面の接着強さを示すとは限らない.破断は接着体系全体の最も弱い部分から起こり,3層構造のどの場所から起こったか確認することが不可欠である.歯質とボンディング材の界面における接着強さの測定が望まれる.そこで,薄膜スクラッチ試験を応用し,ボンディング材と歯質の2層構造の接着強さ試験を行い,その測定特性と精度を明らかにすることを検討した.材料と方法;供試材料として,市販のワンステップボンディング材のビューティボンド,ボンドフォース,アドパーイージーボンド,クリアフィルトライエスボンドを使用した.ワンステップボンディング材の象牙質に対する薄膜接着強さ試験を行い,従来の引張り接着強さ試験と比較検討し,また各ボンディング材の象牙質に対する接触角・表面張力についても検討した.結果:薄膜接着強さにおけるボンディング材の各厚さによる平均接着強さは5.29〜8.50Nを示し,ボンディング材の厚みが増加するにつれて接着強さも大きくなった.各ボンディング材の薄膜接着強さは5.63〜7.19Nであり,標準偏差が1.00N以下と小さい傾向を示した.引張り接着強さにおいては,各ボンディング材の平均接着強さは6.27〜15.59MPa,標準偏差は1.95〜4.49MPaと薄膜接着強さよりかなり大きくばらついていた.薄膜接着強さと引張り接着強さには強い正の相関が認められた.各種ボンディング材および水,エタノール,アセトンの象牙質に対する接触角は経時的に減少し,各ボンディング材の接触角は各ボンディング材の含有する溶媒であるアセトン,エタノールの接触角と近似していた.各種ボンディング材および水,エタノール,アセトンの表面張力の顕著な経時的変化は認めなかった.また,接触角および表面張力と薄膜接着強さに相関は認めなかった.結論:薄膜接着強さ試験は,接着界面近傍の接着強さの定量的評価として有用であることが示唆された.また,ワンステップボンディングシステムの成分中における水,アセトン,エタノールなどの揮発溶媒成分が表面張力・接触角に影響を及ぼすが,ぬれ性が接着強さの主要条件とはならないことが示唆された.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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