日本歯科保存学雑誌
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エナメル質表層脱灰の光干渉断層画像解析への1/e2幅の応用
三冨 純一
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2013 年 56 巻 6 号 p. 488-497

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抄録

目的:光干渉断層画像法(Optical Coherence Tomography,以後,OCT)は,近赤外線を対象物に照射してその表層および内部で反射あるいは散乱する光の様相を光学干渉計によって捉えることで,光干渉強度と内部位置情報から二次元の精密断層像を構築する.したがって,既存の画像診断システムとは画像構築原理が異なることから,OCTイメージ像から歯質の状態変化を正しく把握するための解析法が必要である.そこで,エナメル質初期齲蝕病変におけるOCTイメージ像の解析法について,エナメル質にpHサイクルを負荷した際の状態変化を観察し,信号強度分布から最大ピーク強度値および1/e2幅を求めることによって検討した.材料と方法:ウシ下顎前歯歯冠部唇側面中央付近の歯質を,エナメル質および象牙質で構成されたブロックとして切り出したものを測定用試片とした.これらの試片を,0.1mol/l乳酸緩衝液に1日2回,各10分間浸漬した後,37℃の精製水あるいは人工唾液に保管する2条件のpHサイクルを適用した.試片のエナメル質内部における状態変化観察には,Super Luminescent Diodeを光源とする,Time-Domain型OCT装置(以後,TD-OCT)を用い,B-scan modeから断層像を得た.さらに,A-scan modeからTD-OCTに付属するソフトウェアを用いて信号強度分布を解析することで,最大ピーク強度値を検出するとともに1/e2幅を求めた.成績:精製水保管条件におけるOCTイメージ像は,実験期間の延長に伴ってエナメル質表層におけるシグナル輝度の上昇が観察された.また,最大ピーク強度値は実験期間の延長に伴って有意に大きくなるものの,1/e2幅の変化は認められなかった.人工唾液保管条件におけるOCTイメージ像は,実験期間の延長に伴ってエナメル質表層のシグナル輝度に変化は認められないものの,内部断層像に変化が認められた.また,最大ピーク強度値は実験期間の延長に伴って有意に低下するものの,1/e2幅は有意に大きくなった.結論:OCTを用いた歯質断層像の解析では,エナメル質が脱灰することによって生じた基質的変化が光線反射性および透過性に及ぼす影響を,OCTイメージ像の変化として捉えられることが示された.さらに,ピーク強度値および1/e2幅を測定することで,より詳細な解析が可能であることが示された.

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