日本歯科保存学雑誌
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フッ化物含有PTCペーストの応用がセルフエッチアドヒーシブの象牙質接着性に及ぼす影響
山田 健太郎
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2013 年 56 巻 6 号 p. 498-506

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抄録

目的:歯質の耐酸性を向上させるとともに再石灰化が期待できるフッ化物を含有したペーストを用いた,セルフケアあるいはPTCが行われている.そこで,象牙質へのフッ化物含有ペーストを用いたPTCが,セルフエッチアドヒーシブとの接着性に及ぼす影響について,剪断接着強さ試験および走査電子顕微鏡観察を行うことによって検討した.材料と方法:供試したセルフエッチアドヒーシブはBeautiBond,Bond ForceおよびG-Bond Plusの3製品であり,対照としてエッチアンドリンスシステムのSingle Bond Plusを用いた.接着試験には,ウシの下顎前歯の歯冠部を常温重合レジンに包埋し,耐水性シリコンカーバイドペーパーの#600まで研削して被着象牙質面とした.PTCペーストとしては,フッ化物を含有するMerssage Cleargelおよびフッ化物を含有していないPressageを用いた.PTCペーストの処理条件としては,象牙質面をPTCペーストで30秒間研磨後,10分間経過した後に水洗する群(直後群)およびPTCペーストの応用を1日2回,7日間繰り返した群(7日群)の2条件とした.これらの被着象牙質面に,アドヒーシブを製造者指示条件で塗布,光照射して,コンポジットレジンを接着させた.これらの試片は,24時間,37℃水中に保管した後,クロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した.成績:PTCペーストの応用された象牙質面へのセルフエッチアドヒーシブの接着強さは5.7〜15.7MPaであり,対照としたエッチアンドリンスシステムでは8.3〜19.5MPaであった.Controlと比較して直後群では,フッ化物含有ペーストおよびフッ化物非含有ペーストともに,いずれのセルフエッチアドヒーシブにおいても接着強さは有意に低下した.また,7日群でも,フッ化物含有ペーストおよびフッ化物非含有ペーストともに,いずれの接着システムにおいてもその接着強さは有意に低下し,接着試験後の破壊形式においては界面破壊が増加した.結論:フッ化物含有PTCペーストの応用された象牙質に対するセルフエッチアドヒーシブの接着性は,応用されていない場合と比較して低下することが示唆された.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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