日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
感染根管歯におけるナノバブルと超音波を用いた根管内無菌化と歯髄再生
藤田 将典庵原 耕一郎堀場 直樹立花 克郎中村 洋中島 美砂子
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 57 巻 2 号 p. 170-179

詳細
抄録

 目的 : 当研究室では, イヌ抜髄後の根管内に歯髄幹細胞を自家移植して歯髄を再生させることに成功している. しかしながら, この歯髄再生治療を感染根管治療に応用する際には根管内の無菌化が必要である. 一方, ナノバブルと超音波を併用することで薬剤を象牙細管内に深く浸透させ, 根管内を短期間で無菌化できる可能性が示唆されている. したがって本研究では, イヌ感染根管モデルにおいて, この超音波ナノバブル薬剤導入法による根管内無菌化を検討し, さらに抜髄の際と同様の細胞移植法により歯髄が再生されることを明らかにする.
 材料と方法 : 直径1μm以下のナノバブルを使用し, 薬剤浸透を検討することにより最適な超音波条件を決定した. 次いで, イヌ抜髄後の根管を14日間開放することにより感染根管モデルを作製した. この根管内に超音波とナノバブルを併用してビブラマイシンを1週ごとに導入し, 細菌数の変化を測定した. なお, 対照としてはビブラマイシンの貼薬のみとした. 4回薬剤導入後, 根管内に自家の歯髄幹細胞を移植し, 2週間後に形態観察を行った.
 結果 : 電圧32V, 周波数1.12MHzで120秒間超音波照射した場合, 根管壁から約1,000μm以上の深さまで薬剤は浸透した. イヌ感染根管モデルにおいて, 超音波とナノバブルを併用し薬剤導入を2回行うと細菌数は検出限界まで減少し, 貼薬のみに比べて有意な差がみられた. 超音波とナノバブル併用群においては, 細胞移植2週間後には歯髄および根尖部歯周組織の再生が非併用群に比べて有意にみられ, 炎症性細胞浸潤はほとんどみられなかった.
 結論 : 超音波ナノバブル薬剤法は, 感染根管における歯髄再生や根尖性歯周炎の治療に有用である可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2014 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top