日本歯科保存学雑誌
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原著
長期メインテナンス受診患者における患者背景の質的解析
加藤 智崇杉山 精一牧野 路子内藤 徹
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2014 年 57 巻 3 号 p. 268-275

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抄録

 目的 : 健全な口腔機能を保つために, メインテナンスは大変重要である. しかし, わが国ではメインテナンス受診率がほかの先進国に比べて著しく低い. 本研究の目的は, 長期メインテナンス患者の背景を分析することで, メインテナンス患者の受診率の増加に有用な, メインテナンス患者と歯科医院とのかかわりを明らかにすることを目的とする.
 材料と方法 : 一般歯科医院に来院する長期メインテナンス患者30名に対して個別にインタビューを行い, その様子をビデオ撮影した. ビデオ撮影後, 患者と面接者の会話をテキスト化し, Steps for Coding and Theorization (SCAT) を用いて質的に解析した.
 結果 : 被験者は平均年齢60.7歳であり, メインテナンス継続期間は平均10.4年であった. 背景から, 被験者の93.1%が食生活を気にしており, 79.3%が運動の重要性を認識していた. 被験者のすべてがメインテナンスの継続を希望しており, また, 75.9%の被験者がスタッフに対して好感をもつという記述を得た. 歯科衛生士の指導で行動変容したという記述も多数確認できた. しかし, メインテナンスの継続で重要な一次予防の概念について認識している記述は, 24.1%しか得られなかった.
 結論 : 長期メインテナンス受診患者は健康への意識が高く, またスタッフに対して好感をもっていた. メインテナンス受診率の向上には, メインテナンスの中心スタッフである歯科衛生士の存在が重要であると示唆された.

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© 2014 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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