日本歯科保存学雑誌
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原著
局所麻酔と超音波スケーラーを用いたスケーリングが健全な若年成人の自律神経活動に及ぼす影響
小田中 瞳下地 伸司竹生 寛恵大嶌 理紗宮田 一生菅谷 勉藤澤 俊明川浪 雅光
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2014 年 57 巻 6 号 p. 519-529

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抄録

 目的 : 安心・安全な歯科治療を行うためには, その治療が全身状態に及ぼす影響を解明することが重要である. 著者らは, 歯科治療の影響を評価するための自律神経活動モニターシステムを開発してきた. 本研究では, 新規開発モニターシステムを用いて, 健全な20歳代のボランティアに対して, 歯科治療のなかで偶発症の発生頻度が高い局所麻酔および超音波スケーラーを用いたスケーリングを行った際の自律神経活動の変化について, 検討を行った.
 対象と方法 : 10名 (25.8±0.8歳) のボランティアに対して処置前座位 (2分間), 処置前仰臥位 (2分間), 局所麻酔 (1/80,000エピネフリン添加塩酸リドカイン, 2分間), スケーリング (5分間) および処置後座位 (2分間) を順に行った際の, 血圧, 心拍数および自律神経活動について新規開発モニターシステムを用いて評価した. 自律神経活動は, 心電図のR-R間隔を高周波成分と低周波成分に周波数解析することで, 交感神経活動および副交感神経活動を評価した. 統計学的分析はSteel-Dwass検定を用いて行った.
 成績 : 血圧および心拍数については, 処置中にほとんど変化がなく, 有意な差は認められなかった. 副交感神経活動は処置中に上昇したが, 有意な差は認められなかった. 交感神経活動は処置前座位時よりも局所麻酔時やスケーリング時に有意に下降した. このことから, 健全な20歳代に対して局所麻酔を行う際は, 処置中の侵害刺激よりも精神的なストレスの影響が大きい可能性が示唆された.
 結論 : 健全な若年成人では, 処置開始前の座位時に比べて仰臥位で局所麻酔とスケーリングを行った際に交感神経活動が低かった.

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© 2014 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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