日本歯科保存学雑誌
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原著
コンポジットレジンクラウンの光重合からの経過時間がレジンセメントとの接着性に及ぼす影響
荒牧 音高橋 礼奈和田 敬広宇尾 基弘田上 順次
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2015 年 58 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

 目的 : ダイレクトクラウンは, 近年3M ESPEより開発されたコンポジットレジンクラウン材料である. 未硬化な状態においても歯冠の形態を保持でき, 製作から装着までの過程を1回のアポイントで完了できる利点をもつ. しかし, 重合直後のコンポジットレジンとレジンセメントの接着性能に関する詳細な検討はなされていない. そこで本研究では, ダイレクトクラウンによる補綴物作製後の経過時間がレジンセメント接着性能に与える影響について, ほかの材料と比較検討を行った.
 材料と方法 : ダイレクトクラウンとリライエックスユニセム2オートミックス (3M ESPE), クリアフィルエステニアC & B (以下, エステニアC & B) とパナビアF 2.0 (クラレノリタケデンタル) の2種類のコンポジットレジンとレジンセメントを組み合わせて使用し, ダイレクトクラウンおよびエステニアのディスクを作製した. ディスクを作製直後にレジンセメントにて接着する群 (0h-ダイレクトクラウン群, 0h-エステニアC & B群) と48時間後に接着する群 (48h-ダイレクトクラウン群, 48h-エステニアC & B群) に分け, 微小引張り試験を行い, 試験後の破断面形態を走査電子顕微鏡下にて観察した. またダイレクトクラウンでは全反射型フーリエ赤外吸収分光法 (以下, ATR-FTIR) を用い, ディスク作製直後と24時間後について重合に関する検討を行った.
 成績 : 0h-ダイレクトクラウン群 (76.6±13.4MPa) は, 0h-エステニアC & B群 (60.9±14.8MPa), 48h-ダイレクトクラウン群 (45.8±9.7MPa), 48h-エステニアC & B群 (53.7±12.5MPa) と比べて有意に高い接着強さを示した. また微小引張り試験後の破断面観察では, 0h-ダイレクトクラウン群では混合破壊が多くみられ, コンポジットレジンとレジンセメント間の界面破壊は全くみられなかった. ほかの3群では, コンポジットレジンとレジンセメント間の界面破壊と混合破壊が主にみられた. ATR-FTIR分析より, 作製直後のダイレクトクラウンは24時間後のダイレクトクラウンと比べ, 表層の重合度が低いことが示唆された.
 結論 : 作製直後のダイレクトクラウンは, 作製48時間後のダイレクトクラウン, 作製直後のエステニアC & B, 作製48時間後のエステニアC & Bと比較して, レジンセメントに対して高い接着強さを示した.

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© 2015 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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