日本歯科保存学雑誌
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原著
口腔内カメラの映像を見ながら行う歯科治療
第1報 : 上顎大臼歯の窩洞形成をミラーで見ながら行う従来法との比較
藤江 英宏林 応璣齋藤 渉英 將生藤江 進桃井 保子
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2015 年 58 巻 1 号 p. 60-70

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抄録

 目的 : 私たちは口腔内カメラで術野を撮影し, その映像を見ながら治療する手法を考案し, 日々の臨床に役立ててきた. この研究の目的は上顎大臼歯を窩洞形成する際, 口腔内カメラで人工歯を撮影してその映像を見ながら行う方法とミラーで見ながら行う方法とを比較して, どちらが正確かを調べることである.
 材料と方法 : 対象者を鶴見大学歯学部保存修復学の授業および実習を終了した4年生24人とした. 彼らはミラーで見ながら上顎大臼歯の窩洞形成をする実習を3時間30分受け, 口腔内カメラ (Satellite Scope DP-6 ver. 2, アールエフ) を左手に持って上顎大臼歯を撮影し, その映像を見ながら右手で窩洞形成する実習を2時間30分受けた. なお, 口腔内カメラを用いる際, モニター上のタービンハンドピースの動きの方向と実際の動きの方向を一致させるため, 口腔内カメラの元の映像を180度回転し, さらに左右反転させた映像が用いられた. 実験では上顎左側第一大臼歯のメラミン歯 (A2AN-95, ニッシン) をマネキンにセットし, 12時の位置で窩洞形成を行った. この人工歯の咬合面は平坦で, その中央に十字型のラインが印刷されている. 対象者は十字型のラインの内側を過不足なく, 窩底が平坦になるようにインレー形成用ダイヤモンドポイント (301, 松風) で削るように指示された. 1本目の人工歯はミラーで見ながら, 2本目の人工歯は口腔内カメラの映像を見ながら窩洞形成した. 評価方法は窩洞外形と窩洞の深さの均一性について2人のインストラクターが肉眼で優劣を判断し, χ2検定を行った. また窩洞形成時間も測定し, ウィルコクソンの符号付順位和検定を行った.
 結果 : 窩洞外形の正確性について, 24人の対象者のうち21人は口腔内カメラを用いた窩洞形成のほうがミラーを用いたものよりも優れていた. 窩洞の深さの均一性については, 2人のインストラクターの評価が一致した23人のうち, 19人は口腔内カメラを用いた窩洞形成のほうが優れていた. χ2検定の結果, 窩洞外形と窩洞の深さの両方の評価方法において, 口腔内カメラを用いる方法は, ミラーを用いる方法より有意に優れていた. 窩洞形成の時間については, ミラーを用いた場合158秒 (±79秒), 口腔内カメラを用いた場合150秒 (±52秒) で有意差はなかった.
 結論 : 口腔内カメラの映像を見ながら行う上顎左側第一大臼歯の窩洞形成は, ミラーで見ながら行う従来の窩洞形成と比較して, 有意に正確であることが示された.

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© 2015 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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