日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
垂直歯根破折歯の接着再建に関する研究
恩田 康平初岡 昌憲保尾 謙三三浦 樹津谷 佳代井村 和希森川 裕仁岩佐 一弘吉川 一志山本 一世
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 59 巻 1 号 p. 1-8

詳細
抄録

 緒言 : レジンセメントの歯質接着性の向上に伴い, 破折歯を保存することが可能となってきている. われわれは破折歯の「接着再建・再植法」の予後を知るために, 接着再建した歯根の強度と, 支台築造後の再建歯根の強度について検討を行ったので報告する.
 材料と方法 : 実験1 : 抜去後冷凍保存したウシ歯根を歯軸と平行に切断し, Superbond C & B (以後, SB) で接着し負荷をかけた後, 微小引張強さを測定し, 破断面の形態を走査電子顕微鏡で観察した. 実験2 : ウシ歯根にポスト孔を形成し, それに適合したメタルポストを作製し, ポスト孔に挿入した. メタルポストを歯軸と平行に加圧し, 初期破折強度を測定した. 破折した歯根をSBで再建を行い, 再度メタルポストもしくはレジンポストで加圧し, 再建歯根破折強度を測定した. 測定した再建歯根破折強度を初期破折強度と比較し, 算出した低下率をその試料の値 (以下, 比較値) とした. 同様に再建を行った後5-55°Cのサーマルサイクル負荷をかけ, 再建歯根破折強度を測定し, 比較値を算出した. 実験3 : 実験2と同様に初期破折強度を測定し, SBで再建を行った後, メタルポストを各種セメントで接着させ, 再建歯根破折強度を測定し比較値を算出した. またレジンポストを築盛し, 同様に比較値を算出した. 再破折後の歯根の破壊形態を観察した. 得られた結果は一元配置分散分析, およびTukeyのHSD法を用いて多重比較を行い, 統計学的に検討を行った (α=0.05).
 結果 : 実験1 : 引張接着強さにおいて, どの群にも有意差は認められなかった. 実験2 : TC負荷の有無により比較値に有意差が認められたが, ポストの材質の違いによる差は認められなかった. 実験3 : メタルポストはセメントにより高い比較値を示すが, 破壊形態は再破折であった. レジンポストはSBに比べて比較値は低いが, 再破折以外の破折形態を示した.
 結論 : 接着再建を行った歯根は健全歯根に比べ, 歯軸に平行な応力に対して25%以下の耐久力しかもたない. メタルポストの使用は再建部の再破折を起こす危険が高いが, 一方, レジンポストの再破折の危険性は低い.

著者関連情報
© 2016 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
次の記事
feedback
Top