日本歯科保存学雑誌
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原著
象牙質湿潤状態がユニバーサルボンドの接着性能に及ぼす影響
勝俣 愛一郎門脇 佳孝川野 晋平丁 世俊角田 晋一星加 修平池田 考績田中 享佐野 英彦
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2016 年 59 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

 目的 : 臨床において1ステップ接着システムが広く使用されている. その多くはセルフエッチモードでも, リン酸エッチングと併用するトータルエッチモードでも使用できるユニバーサルボンドである. しかし, 接着強さは従来型の接着システムと比較すると低いという報告もある. また, 脱灰象牙質へのレジンの浸透には処理面を完全に乾燥しないウェットボンディングが有効という報告もある. そこで, 象牙質湿潤状態がユニバーサルボンドCLEARFIL Universal Bond (CUB) のトータルエッチモードでの接着性能に与える影響を微小引張り試験, 走査電子顕微鏡 (SEM) および透過電子顕微鏡 (TEM) で検討した.
 材料と方法 : 接着材としてCUB, 充塡材としてCLEARFIL AP-X Shade A3 (AP-X), 表面処理材としてK-ETCHANT Syringe (Ech), 接着材の比較材料としてCLEARFIL Mega Bond (CMB) を用いた. 28本のヒト抜去大臼歯を歯軸に対して歯科技工用トリマーにて垂直に研削し, 象牙質面を露出させ耐水研磨紙#600で研削, 水洗したものを被着面とした. 歯面処理は以下4条件で行った. 1. MB : CMBプライマー20秒塗布, 乾燥, ボンド塗布, 乾燥, 10秒光照射. 2. NE : CUB10秒塗布, 5秒乾燥, 10秒光照射. 3. ED : Ech10秒塗布, 10秒水洗, 10秒エアーブロー後NEと同様に処理. 4. EW : Ech10秒塗布, 10秒水洗した後乾燥せず湿潤状態を保持しNEと同様に処理. 各処理後にAP-Xを約4mmの高さに積層充塡し, 37°Cの水中に保管した. 24時間後, 精密低速切断機Isometにより象牙質接着界面が1mm2となるスティック状の試料を作製し, 24時間後と6カ月後に小型卓上試験機EZ-testを用いて微小引張り試験を行い統計処理を行った. 破断面はSEMを用いて形態分類を行い, SEMとTEMを用いて接着界面の観察を行った.
 結果 : 24時間後と6カ月後の接着強さを比較すると, EDのみ有意差を認め, ウェットボンディングを行ったEWに有意差は認めなかった. 24時間後においても6カ月後においても各条件間に有意差は認めなかった.
 結論 : ユニバーサルボンドCUBは象牙質に対しセルフエッチモードでもトータルエッチモードでも良好な接着強さを示し, トータルエッチモードではウェットボンディングが有効である可能性を示した.

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