日本歯科保存学雑誌
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原著
サンゴ焼成カルシウム含有洗口剤のプラークおよび歯周組織に対する効果
高井 英樹相羽 悠喜子蔦森 麻衣廣松 勇樹加藤 彩子丹野 努中山 洋平小方 頼昌
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2016 年 59 巻 2 号 p. 219-227

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抄録

 目的 : サンゴ焼成カルシウムを配合したアルカリ性ノンアルコールタイプの洗口剤 (マグナキャプス・デントセーフ) の殺菌効果および臨床的有用性を解析することを目的とした.
 材料と方法 : サンゴ焼成カルシウム水溶液10ml中にPorphyromonas gingivalis (8.5×108/ml), Streptococcus mutans (7.4×107/ml), Escherichia coli (9.4×107/ml), Legionella pneumophila (8.0×108/ml), Salmonella enterica (8.8×107/ml), Staphylococcus aureus (5.0×107/ml) またはVibrio parahaemolyticus (3.1×107/ml) 菌液を0.1ml加えて室温で静置し, 継時的に回収して, 生菌数を測定した. 次に, 39歳から86歳の男女20名を被験者とし, サンゴ洗口群10名とプラセボ洗口群10名の2群に分け, 1日3回 (1回約10ml, 1分間洗口), 1カ月間使用前後に, プロービングポケット深さ (PPD), 臨床的アタッチメントレベル (CAL), ポケット測定時の出血 (BOP), Plaque Index (PlI) およびGingival Index (GI) の測定を行った. さらに, 洗口剤使用前後に歯肉溝滲出液 (GCF) を最深PPD部位から採取し, PCRインベーダー法で歯周病原菌3菌種 (Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Prevotella intermedia, P. gingivalis) の計測を行った.
 結果 : サンゴ焼成カルシウム水溶液中では, P. gingivalisは1分後, E. coliV. parahaemolyticusは5分後, S. mutans, L. pneumophilaおよびS. entericaは15分後, S. aureusは60分後に生菌が検出されなくなった. サンゴ洗口群およびプラセボ洗口群の両者で, 洗口前と比較して洗口1カ月後にPPD, CAL, BOP, GIおよびPlIに有意な改善は認められなかったが, サンゴ洗口剤1カ月使用後の, BOP, GIおよびPlIに改善傾向が認められた. サンゴ洗口群およびプラセボ洗口群の両者で, 洗口後の平均総菌数, A. actinomycetemcomitans数, P. intermedia数およびP. gingivalis数は, 洗口前と比べて有意な減少は認められなかった.
 結論 : サンゴ焼成カルシウム水溶液は, 今回使用した6菌種に対して殺菌作用を有していた. サンゴ洗口剤とプラセボ洗口剤を1カ月間使用前後の歯周病関連臨床パラメーターと最深PPD内からのプラーク中の細菌検査の結果を比較した結果, 両群間に有意差は認められなかった. しかし, サンゴ洗口群で臨床パラメーター中のBOP, GIおよびPlIに改善傾向が認められたことから, さらに長期の比較検討が必要であると考えられた.

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