日本歯科保存学雑誌
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原著
種々の照射条件でHe-Neレーザー照射した各種培養細胞の増殖活性におけるLow Level Laser Therapy (LLLT) 効果
八谷 文貴清水 大杉田 好彦野本 周嗣冨士谷 盛興千田 彰
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2016 年 59 巻 6 号 p. 509-515

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抄録

 目的 : He-Neレーザー照射が種々の細胞に及ぼすLLLT (Low Level Laser Therapy) 効果を検証することを目的に, 正常な細胞と病態学的に異常な細胞 (癌細胞) に対し種々の照射条件, すなわち種々のエネルギー密度と照射時間でHe-Neレーザー照射したときの細胞増殖活性を比較検討した.

 材料と方法 : 培養ヒト歯肉由来線維芽細胞 (HGF-1), 培養ヒト口腔頰粘膜由来扁平上皮癌細胞 (H157), および培養ヒト口腔底由来扁平上皮癌細胞 (H314) を研究に供した. 宮島らの方法に従い, チューブの底部に沈渣, ペレット状になった細胞に対し, 遠心管の下方からHe-Neレーザーを照射した. 照射条件であるエネルギー密度と照射時間は, L1 : 1.38J/cm2, 10分, L2 : 5.75J/cm2, 42分, L3 : 5.75J/cm2, 10分, Cont : レーザー非照射の4群に分けた. L1およびL2は, 遠心管の底部からレーザー照射口まで20.2mm離し, L3は遠心管の底部にレーザー照射口を接触させ, 上記のエネルギー密度になるように照射した. また, 出力は照射前後に毎回計測し, 変化のないことを確認した. レーザー照射した細胞を含む培養液を24穴ポリスチレンプレートを使用して, 3.0×104cells/wellにて播種し, 培養開始時, 3, 6, 12, 24, 48, 72時間あるいは120時間培養した. その後, 培養細胞をWST-8にて呈色反応させ, 96穴ポリスチレンプレートに分割し, マイクロプレートリーダーを用いて, 吸光度 (OD=450) にて6回計測し平均値を値とした. 得られた各データは, Student’s t-test (α=0.05) にて統計処理を行った.

 結果 : L1では, HGF-1およびH314において, Contに対し有意に高い細胞増殖活性を示した (p<0.05). L2では, いずれの細胞でも有意に低い細胞増殖活性を示した (p<0.05). L3では, いずれの細胞でも有意に高い細胞増殖活性を示した (p<0.05).

 結論 : 種々の照射条件でHe-Neレーザー照射した正常細胞と病態学的に異常な細胞に対するLLLT効果はいずれも認められ, 照射条件の設定がきわめて重要であることが明らかとなった. さらに生じたLLLT効果の程度は細胞ごとに異なっており, 種々の細胞は至適な照射条件を有することが新たに判明した.

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© 2016 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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