日本歯科保存学雑誌
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症例報告
抜歯あるいはヘミセクションが必要と考えられる歯の保存において歯内治療が効果的であった歯周-歯内病変の2症例
鵜飼 孝原 宜興
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2017 年 60 巻 1 号 p. 40-48

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抄録

 目的 : 歯周組織の破壊した歯の保存においては, 原因の同定や適切な治療方針の立案が重要である. しかし症状や所見から原因を正確に同定することが困難な場合がある. 今回, 深い歯周ポケットが広範囲に存在し, 根尖を越える部分までの骨吸収があり抜歯適応と考えられた歯の治療において, 歯内治療が効果的であった歯周-歯内病変の2症例を報告する.

 症例1 : 54歳女性. 主訴 ; 左下奥歯の歯肉の腫脹を繰り返している. 現症 ; 下顎左側第二小臼歯に7mm以上の深いプロービングデプス (PD) が広範囲に存在し, エックス線写真では根尖周囲よりも, 骨頂部分で広い骨吸収像が認められた. 下顎左側第二小臼歯には補綴物が装着されており, 歯髄の状態は確認できない. 治療経過 ; 補綴物咬合面から歯質にアクセスすると歯髄が失活していることが確認できたので, 感染根管治療を施行した. 3週間後には著明に歯周ポケットの改善がみられ, その後歯槽骨の改善もみられた.

 症例2 : 33歳女性. 主訴 ; 右下奥の歯肉が腫脹して出血する. 現症 ; 下顎右側第二大臼歯に6mm以上の深いPDが広範囲に存在し, エックス線写真で遠心根周囲には根尖を越える骨吸収と, 根分岐部の透過像がみられるが, 根分岐部病変は触知できなかった. またエックス線写真上で下顎右側第二大臼歯は適正に根管充塡されているようにみえるが, 根尖部周囲には透過像が認められる. 治療経過 ; 根管充塡状態は良好にみえるが根尖部に透過像があることから, 歯内病変の影響があると考え, 歯内治療から開始した. 歯内治療後のエックス線写真で遠心根根尖部と根分岐部の透過像が改善した. その後のスケーリング・ルートプレーニングとフラップ手術により, 遠心の骨欠損部分の改善が認められた.

 結論 : 両症例とも根尖を越える部分まで骨吸収が及んでおり, 抜歯あるいはヘミセクション適応と考えられる状態であったが, 歯内治療を先行することで骨の改善がみられ, 歯を保存することができた.

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