日本歯科保存学雑誌
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原著
ユニバーサル接着システムの酸蝕エナメル質に対する接着性
陸田 明智秋葉 俊介今井 亜理紗須田 駿一矢吹 千晶鈴木 崇之古市 哲也宮崎 真至
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2017 年 60 巻 3 号 p. 153-161

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抄録

 目的 : 口腔内において繰り返し低pH環境に曝された被着歯面を想定し, 人工脱灰液を用いて脱灰されたエナメル質に対するユニバーサルシステムの接着性およびその接着耐久性について検討した.

 材料と方法 : 供試したユニバーサルシステムはAll-Bond Universal (AB), Adhese Universal (AU) およびScotchbond Universal Adhesive (SU) の3製品である. 被着歯面の脱灰条件としては, ウシ歯のエナメル質面を乳酸脱灰液 (pH 4.75) で10分間処理後に水洗する群 (10分群) およびその脱灰処理を1日2回, 7日間繰り返した群 (7日群) の2条件とした. 各脱灰条件に従って処理した後, リン酸エッチングの有無によって, セルフエッチモード (無処理群) およびエッチアンドリンスモード (エッチング群) の2条件を設定した. これらの被着エナメル質面に, アドヒーシブを製造者指示条件で塗布, 光照射してコンポジットレジンを接着させた. これらの接着試片は, 24時間保管 (24時間群) あるいは24時間保管後, サーマルサイクル (TC) を10,000回あるいは30,000回負荷した後, クロスヘッドスピード毎分1.0mmの条件で剪断接着強さを測定した.

 成績 : 脱灰エナメル質へのユニバーサルシステムの接着性は, Controlと比較して10分群においては, いずれの製品においても接着強さに有意差は認められなかった. また, 接着試験後の破壊形式における変化も認められなかった. 一方, 7日群においては, Controlと比較してABエッチング群, 10分群と比較してSU無処理群において, その接着強さは有意に低下した. また, 接着試験後の破壊形式は, AUでエッチング群および無処理群ともに, エナメル質の凝集破壊が減少し, 界面破壊が増加する傾向を示した. TCを10,000回および30,000回負荷した条件においては, すべての製品のエッチング群および無処理群で, 接着強さに有意差は認められなかった. 脱灰条件間では, その接着強さは製品によって異なるものであった. また, 接着試験後の破壊形式は, AUでエナメル質の凝集破壊が減少し, 界面破壊が増加する傾向を示したが, ABおよびSUにおいては, ほとんど変化は認められなかった.

 結論 : ウシ歯脱灰エナメル質へのユニバーサルシステムの接着性は, 製品によって異なるものの, リン酸エッチングの併用は有効であることが示唆された. また, 30,000回までのTCによっても安定した接着耐久性を示した.

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