2017 年 60 巻 3 号 p. 162-169
目的 : 本研究は, ニッケルチタンロータリーファイルをトルク依存型往復回転運動あるいは時間依存型往復回転運動で作動させて根管形成を行った際に生じる, 垂直荷重およびトルクを評価することを目的とした.
材料と方法 : 異なる回転方法で根管模型の形成を行うとともに, その際に生じる垂直荷重およびトルクを記録することを目的とした, 自作型自動根管形成・荷重/トルク解析装置を構築した. この装置は, (1) 異なる回転方法を搭載した根管形成装置, (2) ハンドピースを自動的に上下動させる移動試験ステージ, (3) レジン製根管模型と接続した荷重/トルク測定部からなっている. 実験群はトルク依存型往復回転およびトルク依存型上下動 (TqR群), 時間依存型往復回転および時間依存型上下動 (TmR群), 連続回転および時間依存型上下動 (CR群) の3群とした. TqRモードでは, モーターは連続回転 (300rpm) の後, 既定トルク値を検知すると90度非切削回転 (反時計回り) し180度切削回転 (時計回り) という設定とした. またハンドピースの上下動は, トルク依存型上下動, すなわち2秒下降後に1秒上昇 (10mm/min) の後, 既定トルク値に達すると0.25秒下降後に3秒上昇するよう設定した. TmRモードでは, ファイルは300rpmにて90度非切削回転, 180度切削回転を繰り返す設定とした. TmRおよびCR群ともに, ハンドピースの上下動は, 2秒下降後に1秒上昇 (10mm/min) とした. 透明直線根管模型 (各群n=7), ProTaper Next X2を用いて, 作業長 (14mm) まで根管形成を行い, トルクおよび垂直荷重を記録した. 測定した垂直荷重およびトルクの最大値は, Kruskal-Wallis検定およびMann-Whitney U検定 (Bonferroni補正) にて有意水準5%で解析した.
結果 : 最大垂直荷重, および反時計回り方向における最大トルク値には各群間に有意な差を認めなかった. しかし, 時計回り方向での最大トルク値については, TqR群はTmR群およびCR群に比較して有意に小さい値を示した (p<0.05).
結論 : 本研究の条件下では, トルク依存型往復回転運動とトルク依存型上下動を組み合わせた根管形成で, 時間依存型往復回転運動および連続回転運動と比較して, 形成中に生じるトルクの最大値が有意に低値であった.