日本歯科保存学雑誌
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症例報告
著明な垂直性骨欠損を伴う根未完成歯の歯内–歯周疾患Ⅰ型病変の1症例
阿南 壽松﨑 英津子松本 典祥畠山 純子水上 正彦泉 利雄
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2017 年 60 巻 4 号 p. 211-218

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抄録

 目的 : 歯内–歯周疾患は比較的身近な疾患であるが, 治療を行ううえで, 診断や治療計画の立案に苦慮することがある. それは, 病変の原因を明確に判断できなくなることに起因する.

 今回, 根未完成歯の下顎左側第二小臼歯の中心結節破折により根尖性歯周炎が惹起され, 根尖にまで及ぶ垂直性骨欠損を生じた歯内–歯周疾患に遭遇し, 感染根管治療を行うとともに, 水酸化カルシウム製剤であるビタペックスを応用したアペキシフィケーションを行った結果, 破壊された歯周組織は良好な治癒傾向を示したため, その症例と治療経過について報告する.

 症例 : 患児は10歳の女児. 下顎左側小臼歯頰側歯肉部小腫瘤の精査を主訴に来院した.

 臨床所見 : 35に中心結節の破折および小豆大の腫瘤を認めた. 35は自発痛 (−), 打診痛 (+), 動揺 (−), 根尖部圧痛 (±), 瘻孔 (+) であった. また, 頰側近心に6mmの歯周ポケットが観察され, 出血 (−) であった. ほかの部位では, 歯周ポケットはすべて2mm以下であった. エックス線写真では35のみ, 根尖部から近心辺縁部にかけて帯状の幅広い透過像が認められた. 歯根は未完成で, 歯冠中央の中心結節破折相当部にエックス線透過像が観察された. 瘻孔から挿入したガッタパーチャポイントは, 根尖部付近に到達していた. 35の歯内–歯周疾患Ⅰ型病変 (逆行性歯周炎) と診断し, 感染根管治療, アペキシフィケーションを施した.

 治療経過 : 感染根管治療後, 35近心側のエックス線透過性の減弱と消失した骨組織の再生が継続的に認められた. 感染根管治療9カ月後, 根尖部から辺縁部にかけての骨組織の著明な回復像を認めるとともに, 開大した根尖孔の閉鎖が観察されたことより, 根管充塡処置を行った. 根管充塡2年4カ月後, 下顎左側第二小臼歯に透過像は観察されず, 歯槽頂部の骨レベルは隣在歯と同様であり, 近心側骨組織に明瞭な白線が観察されたことより, 予後良好に推移していることがうかがわれた.

 結論 : 著明な垂直性骨欠損像と根尖孔の開大を認める根未完成歯の歯内–歯周疾患Ⅰ型病変の治療において, 的確な検査および診断の下, アペキシフィケーションを施すことにより良好な経過を得ることができた.

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