日本歯科保存学雑誌
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原著
ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるNOD1の影響
岩佐 一弘小正 玲子吉川 一志合田 征司山本 一世
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2017 年 60 巻 6 号 p. 313-319

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抄録

 目的 : 歯髄は常時, 物理・化学的刺激の下, 歯を維持するために象牙質への栄養補給, 修復象牙質の形成などの役割を果たしている. 可逆性歯髄炎は原因を除去することにより正常な歯髄に回復しうるため, 歯髄に存在する細胞における炎症の進行過程や発症機序を解明することは歯髄の保存のために重要であると考える. 歯髄炎の多くは, 齲蝕の進行により象牙質深部に侵入した細菌による感染症であるため, 自然免疫に関するレセプターによって認識され, 炎症反応が惹起される. また, 刺激を受けた歯髄組織では細胞外マトリックス分解酵素であるmatrix metalloproteinases (MMPs) が産生され, 歯髄組織を破壊し病態が進行する. Receptor interacting protein 2 (RIP2) はNucleotide-binding oligomerization domein protein (NOD) 1と関連しており, 免疫系において重要な役割を果たしている. c-Jun N-terminal kinase (JNK) は, 種々の酵素産生に関与していることが報告されている. 今回, 細菌のペプチドグリカンの構造の一部であるD-glutamy-meso-diaminopimelicacid (iE-DAP) に対する自然免疫レセプターであるNOD1に着目し, ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるiE-DAP刺激によるMMP-3産生およびそのシグナル伝達経路を検討した.

 方法 : 本研究に参加同意を得た患者の抜去歯 (大歯医倫110910号) より歯髄組織を採取・培養し, 3~10世代目をヒト歯髄由来線維芽細胞として本研究に使用した. ヒト歯髄由来線維芽細胞を24 well plateに5.0×105 cells/wellになるよう播種し, 24時間培養後, iE-DAPを0, 5, 10, 20, 50μg/ml加え, 刺激を行った. 刺激終了後, 上清中のMMP-3の産生をWestern Blottingにて検討した. 次にRIP2阻害剤であるGefitinibを0.5, 1, 5, 10, 15, 20μmol/l加え, 同時にiE-DAP刺激を行い, 上清中のMMP-3の産生をWestern Blottingにて検討した. ヒト歯髄由来線維芽細胞を同様に播種し, iE-DAP 10μg/mlを各タイムコースで加え, JNKのリン酸化についてWestern Blottingにて検討した. また, JNK阻害剤であるAS601245, SP600125を30, 70, 110nmol/l加え, 同時にiE-DAP刺激を行い, 上清中のMMP-3の産生をWestern Blottingにて検討した.

 結果 :

 1) ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるiE-DAP刺激において, MMP-3の産生は濃度依存的に増強した.

 2) iE-DAP刺激によって産生が増強したMMP-3は, RIP2阻害剤であるGefitinibにより産生が抑制された.

 3) ヒト歯髄由来線維芽細胞におけるiE-DAP刺激において, JNKのリン酸化は経時的に変化した.

 4) iE-DAP刺激によって産生が増強したMMP-3はJNK阻害剤であるAS601245, SP600125を加えることで抑制された.

 結論 : 以上より, ヒト歯髄由来線維芽細胞においてiE-DAP刺激によるMMP-3の産生にRIP2, JNKの関与が示唆された.

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