2018 年 61 巻 1 号 p. 1-9
目的 : 歯髄組織を保存するためには, より確実に硬組織形成を促す必要があると考えられている. これまでに半導体レーザーを用いた歯髄の硬組織形成を調べる研究はなされているが, 硬組織形成能の違いが出力によるものなのか, 照射時間によるものなのか, 各波長で形成にかかわる因子が違うのかを検討する研究は行われていない. そこで, 本研究では半導体レーザーの硬組織形成能の機序を解明することを目的として 「波長」 に焦点を合わせ, 同出力条件下における, 660nmまたは810nmの半導体レーザーでの硬組織形成能の違いを比較検討した.
材料と方法 : 日本大学松戸歯学部倫理委員会の承認を得て, 20歳の患者の矯正学的理由により抜去された第三大臼歯の歯髄組織を無菌的に取り出し培養した細胞をヒト歯髄培養細胞とし, 10%FBS添加α-MEMにて最長で30日間培養した. 培養上清約10cm上方から波長660nmもしくは810nmの半導体レーザーを出力300mWにて照射し, ALP活性, 石灰化結節の染色, osteocalcin (OCN) の遺伝子発現, BMP-2の遺伝子およびタンパク質発現について検討を行った.
結果 : 出力を同一にした2つの波長の半導体レーザーを用いたとき, 両方の波長でALP活性の上昇およびOCNの発現量増加がみられ, どちらの照射群でもvon Kossa染色の染色性の増大が認められた. また無照射群と比べ, 660nm照射群におけるBMP-2の遺伝子およびタンパク質発現量は有意に上昇したが, 810nm照射群で有意差は認められなかった.
結論 : 出力を同一にした2つの波長の半導体レーザーでは, 硬組織形成に関してBMP量に違いがあることが示唆された.