2018 年 61 巻 1 号 p. 48-57
目的 : 顎関節症と外傷性咬合との関連についてはこれまで明確な結論は得られていないが, 同時期に同側に顎関節症と咬合性外傷が発症していることから, なんらかの関連があることも疑われる. 今回, 顎関節症を示す重度歯周炎患者に包括的治療を行うことで良好な結果が得られたので報告する.
症例 : 患者は32歳の女性. 右側臼歯部に外傷性咬合を認め重度慢性歯周炎と診断した患者であり, 右側顎関節に顎関節症状を示していた. 顎関節治療として徒手的治療 (マニピュレーション) とスプリント治療を行い, 歯周治療後に矯正治療と補綴治療による咬合再構成を行った. 包括的治療により良好な治療経過が得られたが, 経過観察を行うなかで右側に顎関節症状の再発を認めた. 顎関節治療を行うことで, 咬合の不調和を伴うことなく, 歯周組織は安定した状態を維持している.
結論 : 顎関節症を有する歯周病患者では, 顎運動が不安定になり外傷性咬合を生じる可能性があると考えられることから, 歯周治療だけではなく顎関節や咬合に関しての検査や管理を継続的に行っていくことが必要であると考えられた.