日本歯科保存学雑誌
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原著
ステップバック法におけるステンレススチールファイルの回転角度の効果
東 春生鳥居 詳司高橋 慶壮
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2018 年 61 巻 5 号 p. 305-315

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抄録

 目的 : ステップバック (SB) 法は広く普及しているが, 科学的な評価はほとんどなされていない. 近年, さまざまな根管形成の結果がマイクロCTで評価され, その科学的基盤が改善されてきた. 本研究の目的は, 最適な根管形成を行うために関与しうる要因をマイクロCTを用いて評価するための実験系を確立し, SB法においてステンレススチール (SS) ファイルの回転角度が及ぼす効果を調べることである.

 材料と方法 : 49本の上顎犬歯を鋳型にした樹脂製の透明根管模型を用いた. 試料はKファイルの回転角度 (15°, 30°, 60°, 90°, 180°) に応じて5つに分類し, SB法で根管形成を行った (n=7). JHエンドシステムとニッケルチタン (Ni-Ti) ロータリーシステム (以下, Reciproc) を対照群とした (n=7). 試料の根管形成前後における三次元根管形態をマイクロCTで撮影した. 根尖孔から4mm歯冠側までの部位を撮影した根管形成前後の画像をコンピュータ上で重ね合わせ, 画像解析ソフトを使用して評価した. トランスポーテーションの距離と根管内壁の切削量は, 根管形成前後のデータを基に算出した.

 結果 : トランスポーテーションの距離は対照2群に比較してSB 5群で長く, SB 5群間においてSSファイル回転角度が大きくなるにつれて長くなる傾向を示した. 根管内壁の切削量はSB5群に比較して対照2群で少なく, SB 5群間においてファイル回転角度が大きいほど多かった. 水平断面像の解析から, 本来の根管形態を保持している最適のファイル回転角度は30°および60°であった. 根管形成時間では, 対照2群に比較してSB 5群で有意に長かった.

 結論 : 本研究は構築された実験系が根管形成を科学的に評価するために有効であること, およびSB法における最適なSSファイル回転角度は30°~60°付近であることを示す.

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