2019 年 62 巻 6 号 p. 279-285
目的 : メタシールSoftはセルフアドヒーシブシステムで, 接着性のレジン系シーラーのなかでも操作が簡便で, 根管洗浄剤や水分の影響を受けにくく, 根管壁から重合が開始されるなどの利点があり, 高い封鎖性が期待できる. 本研究では, メタシールSoftで根管充塡を行った後の治療成績を評価した.
材料と方法 : 本研究は, 2013年10月から2019年5月までの間に6施設においてメタシールSoftを用いて根管充塡を行った患者を後ろ向きに調査した. 調査項目は, 年齢, 性別, 歯種, 診断名, 治療歴, デンタルエックス線写真による根尖部骨吸収像の有無, 自発痛, 打診痛, 腫脹, 圧痛, 瘻孔の有無, 治療方法, 根管充塡方法とした. 根管充塡後の予後は, 術前および根管充塡後のデンタルエックス線写真により, 根尖部骨吸収像が (1) 消失, (2) 縮小, (3) 不変または拡大の3群に分類し, エックス線写真検査結果が (1) または (2) に分類され, 臨床検査結果がすべて正常なものを成功, (3) に分類されるか臨床症状が一つでも出現したものを失敗と評価した. 成功率は, 抜髄および感染根管治療で分類し, 感染根管治療はさらに術前の病変の有無, 歯内療法の履歴の有無で分類し, Kaplan-Meier法で算出した.
結果 : 対象は197人 (52.0±15.1歳) の381歯で, 抜髄が86歯, 感染根管治療が295歯であった. 感染根管治療を行った歯で, 術前に根尖部骨吸収像がみられたのは115歯, このうち初回治療歯は31歯, 再治療歯は84歯であった. 観察期間は最長5年1カ月, 平均3年6カ月で, 抜髄の成功率は, 1年後97.6%, 2年後96.4%, 5年後96.4%であった. 根尖に病変のみられなかった歯の感染根管治療では, それぞれ98.9, 98.9, 95.3%であった. 根尖に病変のみられた歯の初回治療では64.5, 92.9, 92.9%, 再治療では45.2, 60.7, 75.7%であった.
結論 : 成功率は抜髄, 感染根管治療とも高く, 観察期間の5年間では経時的に成功率が低下することはなかった.