日本歯科保存学雑誌
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原著
トリブチルボランを重合開始剤とする新規レジン複合型mineral trioxide aggregate (MTA) 系材料の辺縁封鎖性に関する検討
井波 智鶴岩﨑 小百合西谷 佳浩伊津野 真一
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2020 年 63 巻 1 号 p. 52-60

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抄録

 目的 : 歯髄温存療法や根管治療において, 微小漏洩や細菌侵入を防ぐことは重要であり, 辺縁封鎖性を有した材料が求められる. これまでわれわれは, mineral trioxide aggregate (MTA) の操作性や辺縁封鎖性を高めることを目的にレジン複合型MTA系材料を開発してきた. 本研究では, 新規レジン複合型MTA系材料の辺縁封鎖性ならびにレジン系修復材料との接合状態について, レジンを配合しない試作MTA材料との比較により評価した.

 材料と方法 : 白色ポルトランドセメント, 酸化ジルコニウムおよび2-ヒドロキシプロピルメタクリレートからなるペーストをトリブチルボラン (TBB : キャタリストV) により重合する新規レジン複合型MTA系材料 (PCX-TBB) と, 白色ポルトランドセメントとX線造影剤からなる粉材を水と混和して硬化させる試作MTA材料 (Exp-MTA) を実験に供した. ウシ歯根管にPCX-TBBあるいはExp-MTAを塡入し, 疑似体液中に10日間保管した後, 両材による辺縁封鎖性を界面への色素侵入試験により評価した. また, 材料と歯質界面の接合状態をSEMにより観察した. 次に, PCX-TBBおよびExp-MTAと接着性レジンセメントスーパーボンド (SB) を接着し, 37℃で24時間静置した後の引張接着強さを評価した.

 結果 : ウシ歯根管を用いた色素侵入試験において, PCX-TBBは10/10本で色素の侵入が認められなかった. Exp-MTAは7/10本で試料調製時にセメントが根管から剝離し, 10/10本で色素が侵入していた. 材料と歯質界面のSEM観察は, 試料が作製できたPCX-TBBのみ実施した. その結果, PCX-TBBと歯質の緊密な接合状態と象牙細管内に形成した多量のタグ様構造物が観察された. 両材とSBの接着強さはPCX-TBBで4.6±2.13 MPaであり, Exp-MTAの0.9±0.37 MPaよりも有意に高い値を示した. 破壊形態の比較では, PCX-TBBで15/15本がPCX-TBBの凝集破壊であり, Exp-MTAは15/15本が界面破壊であった.

 結論 : PCX-TBBは象牙質と緊密に接合し, レジン系修復材料とも親和性を示して良好に接着した. 本研究により, PCX-TBBが優れた辺縁封鎖性を有する材料であることが示唆された.

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