日本歯科保存学雑誌
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原著
歯根尖切除術の教育用顎模型システムの開発とその評価
髙見澤 哲矢半田 慶介鈴木 重人長谷川 達也中野 将人八幡 祥生齋藤 正寛
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2020 年 63 巻 2 号 p. 188-198

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抄録

 目的 : 外科的歯内療法による根尖部の病変除去および根管治療は, 根管形態の破壊や根尖に病変が存在し非外科的治療が経過不良な場合に実施される. 近年確立された歯根尖切除術のモダンテクニックは治療成績の向上に大きく貢献したが, 外科的歯内療法の教育は座学により行われており, 治療技術に関する教育システムは開発されていない. そのため根尖病変除去から逆根管充塡までの一連の術式について実技を習得できる教育システムを構築するためには, 実臨床を模倣した歯根尖切除術教育用の顎模型の開発が必要になる. そこで本研究では歯根尖切除術に最適な模型システムを構築するため, 根尖病変を有する人工歯を付した教育用顎模型を作製し, 講義および実習を行い, その教育効果を評価した.

 材料と方法 : 1顎に2歯の根尖病変を有する人工歯を付した教育用顎模型を新規に作製し, 歯根尖切除術が未経験な歯科医師臨床研修医のボランティアを対象に日本歯内療法学会監修の先進技能取得教材実習項目に従った歯根尖切除術を行った群 (実施群) と実習を行っていない群 (未実施群) に分け, 教育効果を評価した.

 結果および考察 : 研究の結果, 被験者の骨窩洞面積は大きく, 根尖切除の角度および逆根管形成, 逆根管充塡も困難であることが観察された. また座学の後に実習を行うことは, 歯根尖切除術における術式の理解に効果的であることがわかった. これらの結果から, 歯根尖切除術における術式は複雑であり, 技術習得のためには均一化した模型を用いた繰り返しの修練が必要であることが示唆された.

 結論 : 本研究により, 教育用顎模型システムがモダンテクニックによる歯根尖切除術の理論や術式を理解し修得するために有益であることが推察された. また, 同一規格での教育用模型を用いた教育の継続性が重要であることが示された.

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