日本歯科保存学雑誌
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原著
愛知学院大学歯学部附属病院・顕微鏡歯科外来の開設1年7カ月における実態調査
今泉 一郎江幡 香里樋口 直也山口 正孝稲本 京子
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2021 年 64 巻 2 号 p. 156-162

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抄録

 目的 : 愛知学院大学歯学部附属病院は, 2018年11月に 「顕微鏡歯科外来」 を開設した. 本外来はすべて自費診療で, 歯科用実体顕微鏡を活用した精密な歯内治療を専門的に行っている. 現在, 難治症例や解剖学的な理由などで一般歯科医院では対応困難な患者が紹介により来院している. そこで今回, 顕微鏡歯科外来を受診した初診患者を対象に, 各種の医療情報を調査し, 大学病院の特殊外来としての役割を検証した.

 対象と方法 : 2018年11月1日から2020年5月31日までの1年7カ月間に, 愛知学院大学歯学部附属病院顕微鏡歯科外来を受診した初診患者を対象とした. 医療情報として, 性別, 年代, 患者居住地, 部位, 臨床診断名, 初診時臨床症状, 初診受診後の患者動向, 顕微鏡歯科外来での処置内容, 治療回数, 経過について調査し分析した.

 結果 : 顕微鏡歯科外来を受診した初診患者は40名で, 年齢構成は, 40歳代, 50歳代が全体の約半数を占めた. 患者居住地は, 8割以上が愛知県で, そのうち名古屋市が全体の6割弱を占めた. 依頼部位は上顎前歯が最も多く全体の35.4%を占め, 次いで下顎大臼歯が33.3%であった. 臨床診断名はすべて 「慢性根尖性歯周炎」 で, 既根管処置歯の再治療症例であった. 初診患者の65.0%に対し顕微鏡歯科外来で処置を行った. そのうち, 24.1%の症例はマイクロサージェリーによる歯根尖切除術のみが行われ, 65.5%の症例に対し感染根管治療が行われた.

 結論 : 今回の実態調査から当外来の役割は, 一般歯科医院で治癒困難な再根管治療症例の対応であることが判明した. 今後も高次医療機関として地域医療機関と連携を図り, 歯内治療の専門性や価値を地域に発信して, 国民の口腔の健康保持や歯の保存に寄与していく必要がある.

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