2021 年 64 巻 4 号 p. 265-270
目的 : 審美歯科に対するニーズが高まっているなか, 漂白処置はその中心として認識され, 手法の簡便化とともに急速に広がりをみせている. しかし, 漂白のメカニズムに関しては色素の分解のほか, エナメル質の結晶構造の変化や微小脱灰などの報告があるものの, 明確な結論は出ていない. 一方で, 波長掃引型光干渉断層計 (Swept-source Optical Coherence Tomography, SS-OCT) は近赤外線レーザーの波長を掃引し, その干渉シグナルを用いて非破壊・非侵襲的に解像度の高い断層画像をリアルタイムで取得できる装置である. 特にエナメル質への透過性が高く, 散乱係数の変化によるOCTシグナルの増加と減衰係数の変化によって, 歯の脱灰と再石灰化の評価に有用である. そこで本研究では, SS-OCTの漂白歯面観察への応用を考え, 未漂白の歯面と漂白後の歯面をSS-OCTを用いて観察・解析し, 漂白による歯面変化を評価した.
材料と方法 : う蝕のないヒト抜去前歯を使用し, 唇側エナメル質を正中にて区分けし, 片側を被覆した. 被覆していない面をSHOFU Hi-Liteを用いて, 通法に従い計27回の漂白を行った. その後, SS-OCTを用いて断層画像を未漂白歯面と漂白歯面から取得し, 画像解析ソフトImage Jを用いて深度400μmまでのシグナル強度の積分値 (AUC400) および減衰係数 (μt) を算出し, 画像データと併せて検討した.
結果 : 漂白歯面のμtは未漂白歯面に対して有意に高かった. AUC400は漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高かった. また各歯で比較した場合, μtは10本中6本で, 漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高くなっていた. AUC400は10本中5本で, 漂白歯面が未漂白歯面に対して有意に高くなっていた. そのうち, 10本中5本がμt・AUC400ともに有意に差があり, 4本がともに有意差が認められなかった.
結論 : SS-OCTによって観察される漂白による歯面変化は, 典型的な脱灰像とは異なる結果であった. μtとAUC400の変化には相関の可能性があり, 漂白による歯面変化が各歯の歯面性質によって異なる可能性が示唆された.