日本歯科保存学雑誌
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症例報告
う蝕,歯周疾患を初発原因としない根尖性歯周炎の一例
細野 隆也植竹 貴弘神谷 直孝小峯 千明
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2025 年 68 巻 4 号 p. 173-180

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抄録

 緒言:歯根膜腔への外力を原因とする血行障害に続発した側枝への血流遮断とその後の外傷性咬合が歯髄壊死へとつながったものと思われる,う蝕や歯周ポケットを伴わない根尖性歯周炎を経験したため,ここに報告する.

 症例:43が嚙むと痛い,との主訴にて2023年11月中旬急来.既往歴として,2014年3月下旬から2020年4月中旬まで叢生を伴う骨格性上顎前突の診断の下,当院にて矯正歯科治療を受けていた.43はう窩を認めず,根尖部の腫脹もなく,またプロービングデプスも3mm以下であり,辺縁歯肉の炎症所見は認めなかった.咀嚼時痛はあるものの自発痛はなく,垂直打診,根尖部歯肉の圧痛を認めた.デンタルエックス線写真において,歯冠部・歯頸部ともにう窩を疑う透過像は認めず,43根尖を中心に∅5.0mm大の透過像および近心歯根膜腔の拡大を認めた.診断は,矯正治療による歯根膜の拡大を起因とした歯髄壊死から続発した細菌感染による根尖性歯周炎とした.治療経過.2024年1月中旬から感染根管治療を開始.その後43根尖部の透過像,歯根近心の歯根膜腔の拡大像の消失傾向を認め,2024年9月下旬根管充塡を実施.その後ファイバーポストおよびコア用レジンにて築造,アクセスオープンした窩洞にコンポジットレジン修復を行い,43への負担軽減を考慮する歯冠形態とした.

 考察・結論:非う蝕性の歯髄壊死の発症原因について,43の歯根膜腔の拡大より矯正歯科治療による歯根膜へのストレスと咬合性外傷による歯根膜炎が考えられる.そしてそれに続発した歯髄壊死の後の細菌感染による根尖性歯周炎であったと考えている.診断にあたっては数年間遡る問診,矯正歯科治療の既往などの確認を必要とすると考える.

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