歯科医学
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表面改質チタンの細胞適合性と細菌付着性
善入 雅之武田 昭二中村 正明
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2005 年 68 巻 1 号 p. 45-56

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抄録

生体適合性に優れ, 長期に安定して機能する次世代のチタンインプラントを開発する目的で, 3通りの表面改質法, すなわちplasma based ion implantation法によるcpチタンへの窒素あるいは炭素イオン注入試料(パルス電圧 : 5kVおよび10kV, 90分間)とdiamond-like carbon (DLC)膜をコーティングした試料とを作製し, ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞(Saos-2細胞)とヒト歯根膜由来細胞の初期細胞接着および細胞増殖を, そしてSaos-2細胞についてアルカリホスファターゼ(ALP)活性および骨分化mRNA発現量定量測定試験ならびにStreptococcus mutans (S. mutans)による細菌の付着性をそれぞれ調べた.窒素あるいは炭素イオンを注入した試料表面では2段階のパルス電圧ともに明確な窒化物や炭化物は認められなかったが, DLC膜コーティング試料ではDLC膜形成があった.これら表面改質処理したチタン上では, 無処理cpチタンと同レベルの良好な初期細胞接着および細胞増殖が認められた.Saos-2細胞におけるALP活性および骨分化mRNA発現(ALP, コラーゲンタイブIおよびオステオカルシン)については, 無処理cpチタンに劣らぬ結果であった.これに対して, S. mutans付着はいずれの表面性質チタン群とも無処理cpチタンより有意に少なく, 3通りの表面改質チタン群間で差は認められなかった.すでに報告されている物性面の向上に加えて, 本実験においてチタン本来の優れた生体適合性が損なわれないばかりか, S. mutansに対する付着抑制が明らかとなった結果から, 今回行った表面改質処理は次世代のチタンインプラントの創製に道をひらくものといえる.

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© 2005 大阪歯科学会
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